第二章
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「実家で奥さんと一緒に暮らしているとか」
「そんな感じ?」
「ひょっとして」
「そうじゃないかしら」
こうしたことも話される、だがやはり彼の私生活は謎のままだった。恋愛についても相手がいるのかどうかもわかっていなかった。
だがある日だ、不意にだった。
同じ音楽部の学生がだ、彼の持っているものを見た。見ればそれは。
携帯電話だ、携帯電話自体には何もなかった。だが。
問題はそのストラップだった、そのストラップを見てだった。
彼はすぐに友人達にだ、こう話した。
「猫!?」
「猫のフィギュアのストラップ!?」
「それが携帯についてたの」
「そうだったんだ」
「ああ、確かに見たよ」
その目にというのだ。
「あの人の携帯にな」
「猫のストラップが付いていた」
「そうなのか」
「じゃあひょっとしてあの人は
「猫好き!?」
「そうなの?」
「なあ、若しかしたらな」
目撃した学生は友人達に真顔で話した。
「あの人って実はな」
「猫好きか」
「猫好きだっていうの」
「実は」
「そうかもな」
こう予想を立てるのだった。
「あの人だって」
「そうか、すげえ謎の人だけれどな」
「プライベート一切謎だったけれど」
「実はか」
「猫好きかも知れないのか」
「あの人も人間なのね」
こうした言葉も出た。
「あまりにも謎だから人間なのかって思ってたけれど」
「実は異世界から来た人とか」
「そんなのだってか」
「そうかもなんて思ったりもしたけれど」
半ば冗談、半ば本気でだ。
「それでも違うのね」
「まあ確かに謎だし」
「そうしたこともか」
「あるとか考えるのも」
「無理はない?」
いささか自分達に勝手な解釈だがそれだけ圭一が謎に包まれた人ということであろうか。こうした話も入った。
そしてその中でだ、再び話されるのだった。
「とにかくな」
「猫好きなのかな」
「やっぱり」
「ストラップがそうだと」
「じゃあ実家で猫を飼ってるとか」
「そういう感じなのかな」
「それ確かめる?」
その目撃した学生の言葉だ。
「これから」
「そうだな、じゃあ」
「ここは本人に聞く?」
「圭一君に」
「実際に」
「そうしようか、別に悪いこと聞かないし」
猫が好きかどうかだ、確かに悪い話ではない。
それでだ、彼ら等は意を決してだった。
圭一のところに全員で行ってだ、丁渡ピアノの手入れをし終えたところの彼に対しておずおずと尋ねた。
「あの、ちょっといい?」
「何かな」
圭一は彼等をちらりと見てから言葉を返した。
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