第三章
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「そうしています」
「そうだな、問題はフランス軍だ」
他ならぬ彼等だというのだ。
「あの国の軍隊だが」
「彼等は、ですね」
「貴官達とは比較にならない」
ヒトラーは華で笑ってさえみせた。
「戦争よりも美食だ」
「その時その時の」
「シェフに作らせた豪勢な食事が第一だ」
「それとワインですね」
「一次大戦の感覚のままだ」
ヒトラーはフランス軍のこのことも指摘した。
「そしてマジノ線に頼りきっている」
「凡将、いえ無能者ばかりですか」
「将官にこれといった者はいない」
「では」
「無能な敵は有能な味方よりも有難い」
ヒトラーはこの言葉は表情を消してだ、彼らしく厳しく言った。
「そういうことだ」
「では」
「パリ入城の用意も進め給え」
即ち勝利のそれをというのだ。
「勇壮な入城を行うぞ」
「ハイルヒトラー」
マンシュタインは敬礼、プロイセンのそれで応えた。代々のプロイセン貴族であり軍人の家の生まれである彼の誇りだ。
その敬礼の後でだ、早速だった。
マンシュタインは作戦計画をまとめていきヒトラーはそれを認めた。そしてマンシュタインの計画に基づいてだった。
ドイツ軍はフランスを攻めた、ベルギーやオランダは呆気なく一蹴され。
フランスもだ、アルデンヌの森をだった。
ドイツ軍の機械化部隊に越えられてだ、その急襲を受けて。
総崩れとなった、その思いも寄らぬ攻撃にフランス軍は忽ち恐慌状態となった。
「馬鹿な、戦車がアルデンヌの森を越えたのか!」
「そんなことが出来る筈がない!」
「一体どうなっているんだ!」
「ドイツ軍は今何処にいるんだ!」
最早戦いどころではなかった、総崩れとなり。
実際にだ、ドイツ軍はヒトラーの言葉通りパリに入城した。ヒトラーは降伏のサインを一次大戦の時に使われた列車をあえて出して行い。
ベルサイユ宮殿もルーブルも見て回った、そうして。
そのうえでだ、こう言うのだった。
「フランスとの戦いの勝因は二つだ」
「二つですか」
「二つありますか」
「こちらに有能な者がいた」
マンシュタインのことだった、他ならぬ。
「そしてだ」
「そのもう一つがですか」
「それがあるのですか」
「そうだ、フランス軍の士官達が無能だった」
彼等のことも言うのだった。
「一次大戦の感覚のままでしかも美食のことばかり考えていた」
「戦いではなく」
「それをですか」
「大軍も優れた兵器も使いこなせなかった」
そのどちらもというのだ。
「それではだ」
「負けるのも道理」
「そういうことですね」
「フランスが」
「所詮敵ではなかったのだ」
ドイツの、というのだ。
「無能な者ばかりではな」
ヒトラーは自信に満ちた笑みで言った、その
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