6部分:第六章
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第六章
人形の目のようになる。沙耶香はその彼女に問うてきた。
「まず聞きたいことはね」
「はい」
婦警は糸が切れたマリオネットのようになっていた。そのままの様子で答えを返すのであった。
「その不審者の性別だけれど」
「女らしいです」
婦警の声もまた抑揚がなく人形的であった。その動きもカクカクしてそれがさらに人形めいたものに見せていた。
「女なのね」
「そうです。それで」
「それで?」
言葉はさらに続いた。沙耶香はそれにも問う。
「白いそうです」
「白・・・・・・」
沙耶香はその単語を聞いて考える顔になった。その顔のまままた婦警に問う。
「白なのね」
「そうです」
婦警はその人形の声でまた答えた。
「白人かどうかわかりませんが白なのは事実です」
「そうなの。白、ねえ」
ここで今も降っている紅の雪を見る。それは白とはまさに正反対の艶に満ちた世界であった。とても結び付きそうにはなかった。
「他に手掛かりは?」
「私はそこまでは」
彼女は答える。
「知らないです」
「そう。それじゃあね」
沙耶香は質問を変えてきた。そっと彼女の耳元に近付いて囁いてきた。
「もう一つ教えて」
「何をでしょうか」
「貴女の上司よ」
「私のですか」
「ええ。その不審者を探しているのは誰かしら」
沙耶香は今度はそれを問うてきた。その間もじっと婦警の目を見詰めている。
「篠原警視正です」
「篠原警視正ね」
「はい。御存知なのですか?」
「さて」
この質問にはとぼけてみせてきた。
「詳しくは知らないのだけれどね」
「そうなのですか」
「ええ。じゃあいいわ」
そこまで聞いたらもう話は終わりであった。沙耶香は話を打ち切ってきた。
「お疲れ様」
そう言って魔術を解いてきた。婦警は急に我に返った。
「あれ、私今まで」
「話したことはこれで全部だけれど」
ふと気付いた彼女に沙耶香がそれまでの話の続きを装って声をかけてきた。
「まだお話することはあるかしら」
「えっ、いえ」
彼女は何とか記憶を探りながら答えた。それはもうないのは事実であった。
「ないです。御迷惑おかけしました」
「いえ、仕事に真面目なのはいいことだから」
沙耶香は頭を下げる彼女に対してうっすらと笑ってこう述べてきた。
「気にしないでいいわ」
「はあ」
「特に貴女のような職にある人はね。そうでないと」
「有り難うございます」
「御礼はいいの」
沙耶香はその婦警に対して妖しい笑みをその整った口元に浮かべて述べてきた。
「ただ」
「ただ?」
「何か魔法にかかったみたいです」
「あら」
その言葉に今度はくすりと笑ってみせる。
「そうなの。何か不思議ね」
「そんな筈ないのに」
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