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黒魔術師松本沙耶香  紅雪篇
19部分:第十九章
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すると漆黒の髪がバサリと落ちその身体を覆ってきた。
「風邪をなおしてあげるわ。いい?」
 また佳澄の目を覗き込んできた。今度はそのまま顔を離さない。
「ベッドでね。二人で」
「二人で」
「そうよ。心ゆくまで。なおしてあげるわ」
 そのまま佳澄を彼女のベッドへと連れて行く。そこで交わり淫蕩な世界へと入るのであった。
 沙耶香は佳澄を横に寝かせて白いベッドの中にいた。二人は一糸纏わぬ姿になっていてその中にいる。佳澄は沙耶香の腕の中に抱かれていた。
「どうだったかしら」
 沙耶香は抱いている佳澄に声をかけてきた。見れば彼女は腕の中で小さくなっていた。
「はじめてだったのよね」
「はい」
 佳澄はその言葉にこくりと頷いてきた。だが赤い顔が今では白くなっている。眼鏡はかけたままであった。
「こんなのだったんですね」
「そうよ。本では知っていたみたいね」
「ええ」
 その言葉に答える。答えた途端に顔がまた赤くなった。
「こんなのだったなんて」
「これが女の味よ」
 沙耶香は言う。
「わかったわね」
「はあ」
「男はまだ知らなかったわね」
「そんなのはとても」 
 顔をさらに赤くさせて言ってきた。恥じらいが見える。
「まだです」
「最初は男の子を知りたかったのね」
「というよりは」
 佳澄はその言葉に返してきた。
「こんなのって。まさか」
「そうよね。考えていなかったわよね」
「はい。やっぱり」
「そうよ。これは普通ではないのよ」
 沙耶香もそれは認めた。しかし。
「けれどそうだからこそいいのよ」
「そうだから」
「ええ。普通じゃないことなのだから」
 その目が細くなる。佳澄を抱きながら笑っていた。
「いいのよ。そうではなくて?」
「普通じゃないからですか」
「では聞くけれど」
 佳澄本人に対して問う。
「これは。気持ちよくはなかったかしら」
「えっ」
「どうなのかしら。気持ちよかったわよね」
「えっ、ええ」
「素直でいいわ。女もなのよ」
 沙耶香の笑いながらの言葉であった。籠の中の小鳥を抱いて遊ぶ魔性の笑みであった。
「女の人も」
「そうよ。いいものなのよ。男もそうだけれどね」
「そうなんですか」
「ええ。それで風邪はなおったわね」
 不意に話を風邪にやってきた。これは意表を衝く形であった。
「私の魔術でね」
「魔術で」
「これでわかったかしら」
「ええと」
 だが佳澄はまだ微妙な顔を沙耶香に見せていた。沙耶香もそんな彼女の顔を見て咎めるのでもなく笑うのであった。
「いいわ。わからなくても」
「すいません」
「これは元々昼の世界のものではないのだから」
 そう述べてきた。
「昼の世界!?」
「そう。これは夜の世界のもの」
 自分の魔術をそう評し
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