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逆さの砂時計
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るんだぞ?」
 そうだよな。なんか、そういう流れっぽい気はしたんだ。
 けど。
 「私は「ロザリア」だ。此処で現実逃避してやがるバカがくれたこの名前がある限り、私は消えない」
 紫色の目がほんの少し丸くなった。
 「なんだっけ? 違う時間に観測された現象は無かった事にはできない? じゃあ、よく見てろよベゼドラ。 私は私の名前と契約する。ロザリアという自我は、何があっても消えない。名前が私の記憶と存在を証明する!」
 「……ロ……ザっ」
 ベゼドラが驚き、金髪男が小刻みに肩を揺らして……
 「く……っは、あっはっはっは!! 面白い性格になったな、アリア。いや、ロザリア。なら、その契約が果たして有効となるかどうか、試してやるよ」
 肩に回されていた手のひらが首輪に触れて。淡い光が放たれた瞬間、ボロッと崩れ落ちた。
 時間と空間を操る力って言ってたから、多分、首輪の時間を朽ちるまで進めたんだろう。
 久しぶりに首周りが軽くなった。
 「戻って来い。俺のアリア」
 首輪を壊したその手が、私の額を柔らかく覆う。
 ベゼドラの手を払って、両手を落とす。
 ベゼドラが何か言おうともがいているが、無視して目蓋を閉じる。
 後でちゃんと治してやるから、とりあえず待ってろ。バカ。
 金髪男の手から、薄い緑色の淡い光が放たれた。


 光は額から広がって、頭頂部から足先までを隈無く包み、長い髪を更に長く緩やかに伸ばした。(ささ)やかな胸先は張り良くふっくらと膨らみ、全身も魅惑的な成人女性の物に変化する。額から離れる手を、ゆっくり開いた薄い緑色の目が見上げた。
 「……レゾ……ネクト……」
 金髪紫瞳の男が、僅かに吊り上がった目を細めて美しい女を見つめる。
 「……お帰り、アリア」
 レゾネクトの右手のひらがアリアの頬をふわりと包んで、涙に濡れた両の目元に口付ける。
 「ア、リア……ッ!」
 ベゼドラが殺意溢れる瞳で二人を睨み付けた。
 怪我が治りきってない所為か、まだ身動きできないらしい。
 口周りを神父の血でベットリと染めている。
 アリアは静かな瞳で彼を見下ろし……レゾネクトから離れて立ち上がると、何も無い空間に右手を掲げた。
 宙空にふわりと、薄い緑色の光の繭が現れる。
 その内側に、漆黒の髪、褐色の肌の男が膝を抱えた姿勢で丸くなっていた。
 まるで、胎児のように。
 「貴方を解放し、その器の主導権を神父に返します」
 「……ッ!!」
 ベゼドラの瞳がこれ以上無いほどの憎悪で満たされる。必死に上半身を起こそうとするが、神父の体は彼の意思に従える状態ではない。無駄に足掻こうとする姿を横目に、レゾネクトがくすくすと愉しそうに肩を揺らしている。
 「……アリアぁあ……ッ!!」
 まさに血を吐く叫びが礼拝堂
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