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逆さの砂時計
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いない。アリアの力は十全ではないが、俺と共有されている。俺がお前という空間をアリアだった頃に戻せば済む話なんだよ、ロザリア」
 頭が痛い。なんだコイツは。何を言ってるんだ? アリアとか時間とか空間とか契約とか……要するに何がどうなってるんだよ。クロスツェルを助けられるって話なのか? クロスツェルをクロスツェルに戻せば、やっぱりクロスツェルは死ぬって話なのか?
 「……ロ ザリ、ア……」
 「っ?」
 ベゼドラの右手が、私の左手を掴んだ。まだ怪我が塞がってないからか、あっさり振り払えそうな弱々しい力で。
 「……よ、け いな こと、する な」

 ムカ。

 「余計とはなんだ! お前がとっとと逃げないからクロスツェルがこんな深手を負ったんだろうが!! 良いから治るまで大人しくしてろ、このどアホ!!」
 「……っ、さっさと何処かへ行け!! 喰われたいのか!!」
 何を焦ってるのか、ベゼドラが苦痛とは違う緊張を顔に滲ませて……また、血を吐いた。
 「! ど、怒鳴るな頂点バカ!!」
 ああ、もうなんか凄い腹立つ。なんの為にこんな事してるんだ私は。
 耳の奥では警告音が鳴りっぱなしだし、治そうとしてる奴にはどっか行けとか言われるし。
 望み通り放っておけば良いじゃんか。
 ベゼドラは気持ち悪いし態度悪いし乱暴だし殺したいとかばっか言うし。クロスツェルのバカは一応居るんだろうけど、それなら今まで愛してるとかほざいて散々私を抱いてたのも、やっぱりクロスツェルなのか。
 なんだそりゃ。どっちも変態色欲魔か!
 最低だ。最悪だ。
 心底腹の底から気持ち悪いわ、ボケ!
 「良いかよく聴け、バカ男共。私はお前らなんか大っ嫌いだ! 愛してるって言えば好き勝手できるとか勘違いしてんじゃねーぞ! こっちは汚い思いばっかさせられて、もう本当にうんざりなんだよ! 特にクロスツェル! てめぇ、何が善きように導きます、だ? 大嘘吐きが! お前の行為の何処に善いものがあったんだよ? え? 引き籠ってないで直接文句言わせろ! んで、一発ぶん殴らせろ! 一言の弁明も無しに楽になれると思うなよ!!」
 ムカツク、ムカツク、ムカツク、ムカツク!
 なによりムカツクのは、こんな莫迦で身勝手な男共を見捨てられない、自分の甘さだ。
 「……っロ ザ」
 警告音が大きくなる。心臓が煩い。ベゼドラが何か言おうとしてる。金髪男の顔が愉しそうに微笑んだ。全部にまとめて返答してやるよ。
 喧しい! ってな!
 「……アリアだかなんだか知らないが、私がそれになれば、クロスツェルの意識を取り戻せるんだな?」
 真横の顔を睨み付けた。勝手に溜まる涙の所為で歪んでる。
 「お前がそれを望むなら」
 「じゃあ、やれよ」
 「即答だな。アリアに戻れば、ロザリアの記憶は消え
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