14部分:第十四章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第十四章
動かしただけであった。それで紅の吹雪の勢いが増す。それは沙耶香の黒い炎と完全に拮抗していたのであった。
「やるわね、ここでも」
「貴女が向かって来るというのなら」
女は答えてきた。
「私もまた」
「そう。けれどね」
沙耶香はそれに応えて言う。
「こちらも。やらないわけにはいかないのよ」
「戦うのね」
「さっきも言ったわね」
言葉の繰り返しになるがあえて言い返した。
「そうよ。この雪を止める為」
「そう」
女はそれを聞いて目をまた動かしてきた。
「そうなの。雪を止めないのね」
「だから言ってるわよね」
また女に述べる。
「さっきから。そうだって」
「それだったら」
「!?」
女の声の色が変わったのに気付く。それを見て攻撃を控えさせる。
それは女も同じであった。二人は同時にそれぞれの吹雪を収めたのであった。
「どういうこと!?それは」
「私は戦うつもりはないの」
女は述べてきた。
「それはわかって」
「こちらが仕掛けて来なければ、ね」
「ええ」
こくりと頷いてきた。その通りであるということだ。
「だから」
そしてまた言う。
「私は争わないわ」
「待って」
沙耶香はそんな彼女を呼び止めた。既に炎の翼は消している。また雪が積もっていく中で話をするのであった。女も既に吹雪から普通の雪に変えていた。
「それでも雪は降らせるのね」
「それはね」
止めないと言う。一見矛盾していた。
「止められないわ」
「止められない」
「そうなの」
彼女は今確かに止められないと言った。それは沙耶香の耳にも確かに届いた。
「今のままでは」
「では聞くわ」
沙耶香の目が光った。戦いではなく思考に。
ゆっくりと、だが確かに。沙耶香は女に問うた。
「貴女は雪を止められるのね」
「止められるのは私だけ」
はっきりと述べた。
「そう。そして」
それを聞いたうえでまた問う。事実を確認するかのように。沙耶香はそこに何かを見ていた。
「今は止められない」
「そうよ」
そして彼女はそれも同時に認めたのであった。
「その通りよ」
「そう、わかったわ」
沙耶香はその言葉を聞いて矛を収めた。もう戦うつもりはなかった。
「じゃあ。またね」
「帰るの」
「ええ。ただし」
沙耶香はここで言ってきた。
「必ずこの雪を止めてみせるわ。これは仕事だから」
「そう、私を止めるということね」
「そうよ。それは覚えておいて」
「わかったわ。ではまた」
沙耶香が言うと女はすうっと姿を消した。まるで煙のように紅の世界の中に消えてしまったのであった。後には何も残ってはいなかった。
「去り際には何も残さない」
沙耶香はそれを見て呟いた。
「綺麗ね
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ