解放
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を退けた男の右手がクロスツェルの額を鷲掴み、二人の間に小さな光が ぱん! と弾けた。
手を離されたベゼドラが目を丸くしている。
「っ……?」
頭の奥で澄んだ鈴の音がする。一度目は りん! と短く。二度目は りぃーん……と尾を引くように。
響きが掠れて消えると、全身に力が戻るのを感じた。
「……小賢しい封印は元に戻した。おいで、アリア」
映像の向こうから、振り返った男が笑顔で真っ直ぐに自分を見てる。手を取れとでも言うのか、右手を差し出しながら。
解る。私はもう飛べる。飛び方を思い出した。
だから。
「クロスツェル!」
男の手を無視して、その背後。倒れたままのクロスツェルの横に転移した。
鎖自体は体に触れてなかったからか、付いて来たのは首輪だけ。
突然横に現れた自分を見て、ベゼドラが動揺した。
「……な、ぜ」
「黙れバカ! この体はクロスツェルの物だ! クロスツェルを傷付けるな! クロスツェルを殺すな!!」
「……バカ は、どっちだ……っ。神 父は、とっく に 死んで……っ」
また、血を吐いた。青どころか土気色になってる。
早く治さないと、本当にヤバい。
「黙ってろ!」
両手をクロスツェルに翳して意識を集中する。此処まで酷い怪我は治した事が無いから、完全に治せるかどうか判らない。
「……死んでる? 神父が?」
とにかくやってみようとしたその時、背後から不思議そうな男の声がした。
「其処に居るだろう」
馴れ馴れしく私の肩を抱いて屈んだ男が指を向けた先は、仰向けに倒れているクロスツェルの体。
「……これはクロスツェルの体だ。中身はベゼドラ……」
「そのベゼドラと器の間に、神父の魂が形を残しているんだが」
…………え?
って、ちょっと待て。
どうしてお前まで驚いてるんだ、ベゼドラ。
「どういう意味だよ? クロスツェルはベゼドラに魂を喰われて消滅したって」
頬を付ける距離の男に目を向ける。関わるなと頭の片隅で警告が聴こえるが、今はそれどころじゃない。
「……なるほど。言動が繋がらない理由は、自覚が無い所為か」
男が何かに気付いたのか、クスクスと笑い出した。
「ベゼドラよ。貴様、アリアにこう言っているな。愛してると叫ぶクロスツェルの声がする。だからアリアを殺せない、と。それは半分正しいが、半分は誤りだ」
「……な、に?」
「アリア……いや、ロザリアを愛しているのは、神父だけではない。貴様自身もだ」
……は?
「……ふ……ざ けた、こと を……!」
「貴様は神父を通してロザリアを見続けていた。アリアだと気付いていながら、アリアとはまるで違うロザリアを。暗い地の底から見上げた光はさぞ眩しいものだったろう? 貴様が神父を喰い切れ
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