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逆さの砂時計
解放
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の上に顎を乗せた。
 ベゼドラはどうしてるだろう。食事を置いてったなら、そろそろ夜明けの時刻。信徒を迎える準備を始めてる頃か。
 目を閉じて礼拝堂を思い浮かべると、その場に居るって錯覚するほど鮮明な映像が、目蓋の裏に映し出された。
 「……?」
 神父じゃない人影が祭壇の前に居る。
 真っ黒い服で全身を覆う金髪男。足が長い。クロスツェルと同じくらいの身長だ。教会のシンボルと同じ、葉っぱを銜えた鳥の形のペンダントをしてる。
 信徒……にしては、随分早い礼拝だな。
 何の気無しに紫色の目を覗き見て……全身に寒気が走った。
 思わず目蓋を開いてしまっても、映像は視界に留まってる。
 ベゼドラが礼拝堂に入って来た。早朝の訪問者に首を傾げてる。
 「駄目……っ」
 男に近寄ろうとするベゼドラを遮ろうとしても、伸ばした手は映像の中に届かない。膝立ちになった勢いでタオルが床に落ちる。
 「駄目だ!」
 私はこの男を知らない。会ったことも見たことも無い。
 なのに、解る。
 この男に関わってはいけないと、心臓が早鐘を打って警告してる。
 ベゼドラが驚いた様子で数歩分飛び退いた。何か言ってるが、耳鳴りが酷くて聞こえない。
 男が突然真顔になって……
 「離れろバカぁ!!」
 礼拝堂に紫色の雷が落ちる。
 地下室にも振動と爆音が直接響く。
 吹き飛ばされたクロスツェルの体が、背中から壁に激突して……血を吐いた。
 ヤバい。絶対に内臓がやられてる。
 ガラス瓶で突き刺した感触を思い出して、肩が震えた。
 「! やめろ!」
 男が床に倒れたクロスツェルの腹部を蹴飛ばして、踏み付ける。
 また血を吐いた。
 顔が青褪めて、脂汗が滲んでる。
 駄目だ。ベゼドラが……クロスツェルが死んでしまう。
 止めようと立ち上がって走り出すが、扉に手が届く寸前で首輪を繋ぐ鎖に食い止められる。首に圧力が掛かり、咳込みそうになって……急に全身の力が抜けて膝から崩れ落ちた。
 ほぼ同時に、男の手から薄い緑色に光る弓矢が現れる。
 力を持っていかれてる。理屈はわからないが、そう感じた。
 クロスツェルに狙いを定めてる。
 「……やめろ……っ」
 心臓が爆発する。耳鳴りが更に酷くなる。頭まで痛み出した。
 弓が引き絞られて……
 「やめろ!! クロスツェルを殺すなあぁぁあああッッ!!!」
 映像が薄い緑色の閃光で埋め尽くされる。それは一瞬の間を置いて飛散し、光る雪となって礼拝堂に降り注いだ。
 男の手から弓矢が消え、二人の驚いた表情が光る雪に向けられる。
 「神父を護りたいのか? アリア」
 男の言葉がすんなりと耳に入って来た。
 耳鳴りが消えてる。頭痛もしない。代わりに、大粒の涙が勝手に溢れ出した。
 「……そうか」
 足
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