暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
忘れ去られた悪意
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読むのだろうそれには、もちろん聞き覚えもない。

だが彼または彼女に仮に負けても、レンにはもう直接的なデメリットはない。

なぜなら、次はもうCブロックの決勝戦だからだ。決勝まで勝ち進めれば勝ち負けに関係なく本戦に上がれるというルール上、厳密にこの決勝をやる意味はないのだが。

―――まあ、白黒つけたいってのがゲーマーの本音ってトコだね〜。

のんびりと思考すると同時。

遅々とした速度でカウントを続けていた数字がゼロを刻むと同時、幾度も経験した転移光が身を包み込む。最後まで少年が念じていたのは、どうか次は平和なステージでありますように、ということのみだった。










Bブロック、決勝戦。

転送を経て目蓋を開けると、草木の一本さえ生えていない荒野の中にぽつんと乱立している西部劇みたいな街と、その隙間から今まさに沈まんとしている血の色の夕陽が眼に飛び込んだ。

ステージ名《西部の荒野街》――――なんだか気分までテンガロンハットを被って正々堂々勝負とかいう気分になってくるようなものだが、しかしユウキはまったくそんな思考を発することができなかった。

「…………………………」

こつん、と。

足元にあった小石を蹴る。

それ自体に意味はなかったのだが、少女はそれで何かの切り替えをするように頭を軽く振った。次いで、手近にある裏路地とも呼べないような家と家の隙間に身体をねじ込む。

手を伸ばし、腰に吊っている光剣の柄に触れる。金属質なひんやりと硬質な手触りから、冷たさ以外を感じるようにキツく目を閉じた。

―――今は色んなことがあってネガティブになってる。だけどそんなことじゃダメだ。全力でぶつからなきゃ、相手の人にも失礼だよね。

よし!と気合い一発。

ひゅうひゅう、というどこか寂しげな風鳴りをBGMに、よく映画で見かける、ボール状の草の塊がスッ飛んでいく。よくよく思うのだが、アレは本当にああいう植物があるのだろうか。

草の球体がコロコロと転がっていくのを視界の端に捉えながら、ユウキはにゅっと路地から顔を突き出して辺りを見回した。

まるで神様が―――この場合はGMか―――適当に上空から家を落っことしたみたいに整合性や機能性といったものをガン無視した家の並びは、視界の確保が異様に困難になっている。教科書で見た、敵に攻め込まれないようにわざと遠くを見渡せないようにしている昔の城下町のようだ。

まあこれはたぶん、そういうステージ特性なんだろうけど、と色々台無しな思考を胸中で呟きながら、少女はなるべく音を立てないように手足を左右の木壁に突っぱねた。

そのまま、どこかのクモ男よろしく上に登り、木製の屋根に足を掛ける。

西部劇に出てくる家々の建築方式は
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