暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
SAO編
第72話 純真無垢
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 全員がそれの中身が何なのか、理解出来た。澄んだ金属音がいくつも重なった音、それを訊いて中身が大変な額の金銭だと言う事に。

「これは、あの指輪を処分した金の半分。金貨1枚だって減っちゃいない。………金のためではない。私は……私はどうしても彼女を殺さねばならなかった。彼女がまだ私の妻でいる間に。」

 丸眼鏡を一瞬苔むした墓標に向け、直ぐに視線を外した。

「グリセルダは、現実世界でも私の妻だった」

 その言葉に皆が驚愕を隠せない。小さく口を開ける。鋭く息を呑む。そしてヨルコ達も驚きの色が走っていた。当然だろう……、現実世界での本当の婚約者に手をかけたのだから。

「私にとっては、一切不満の無い理想的な妻だった。夫唱婦随と言う事場は彼女の為にあったとすら思えるほど、可愛らしく、従順でただ一度の夫婦喧嘩すらした事が無かった。だが……共にこの世界に囚われた後……彼女は変わってしまった……」

グリムロックは帽子に隠れた顔をそっと左右に振り低く息を吐いた。

「強要されたデスゲームに怯え、恐れ、竦んだのは私だけだった。いったい、彼女のどこにあんな才能が隠されていたのか……。戦闘力においても状況判断力においても、全てが私よりも大きく上回っていた……。それだけではない。私の反対を押し切って、ギルドを結成し、鍛え始めた。……彼女は現実世界にいるときよりも遥かに充実したようで生き生きとして……その様子を側で見ながら、私は認めざるを得なかった。私の愛した《ユウコ》は消えてしまったのだと。これでは、たとえゲームがクリアされて、現実世界に戻れる日が来たとしても、大人しく従順だった彼女は、ユウコは永遠に戻ってこないのだと」

 前合わせの長衣の肩が小刻みに震える。それが自嘲の笑いなのか、あるいは喪失の悲嘆なのか、皆には判断が出来なかった。囁くような声でそれは更に続く。

「……私の畏れがわかるか? 君らに理解できるかな? もし現実世界に戻った時、ユウコに離婚を切り出されでもしたら……、そんな屈辱に私は耐えることができない。ならば! ならばいっそ、合法的な殺人が可能なこの世界いる間にユウコを! 永遠の思い出の中に封じてしまいたいと願った私を誰が責められるだろう!?」

 それは、正におぞましい独白だった。
 それが途切れても、暫く言葉を発するものはいない。キリトは、自分の喉からひび割れた声が押し出されるのを聞いた。

「屈辱? 屈辱だと……? 奥さんが言う事を聞かなくなったから、……そんな理由で、奥さんを殺したって言うのか?SAOから解放を願って自分を、そして、こんなにも慕ってくれている仲間がいる人を!そして……いつかは攻略組の一員にもなれただろう人をアンタは……そんな理由で……」

 背中にある剣に走ろうと一瞬震えている右手
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