暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
SAO編
第72話 純真無垢
[6/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ームに届けてくれた。だから私達は、ここを……、この墓標をリーダーのお墓にすると決めたとき、彼女の使っていた剣を根元において、耐久度が減少して消滅するのに任せた。でもね、それだけじゃないのよ。みんなには言わなかったけど、私は遺品をもう1つだけ、ここに埋めたの」
 
 言うやいなや、彼女は墓標の裏に跪くと、素手で土を掻き始めた。全員が無言で凝視する中、やがて立ち上がった夜子は右手に乗ったものを差し出した。
 それはじめんから掘り出されたのにも関わらず、月光を受けて銀色に光るごく小さな箱。

「あ……、それは……」
「……永久保存トリンケット」

 トルコの手の中にあるその箱を見たレイナとアスナは小さく叫んだ。ヨルコが示したそれは、マスタークラスの細工師だけが生成できる《耐久値無限》の保存箱。
 大きさが精々10cm四方の為、大きなアイテムは入れられないが、アクセサリ程度であれば、収納は可能だ。そして、自然消滅する事も絶対にない。

 ヨルコは、銀の小箱の蓋を持ち上げた。その白い絹布の上に鎮座するのは、2つの指輪。

「これは、リーダーがいつも右手の中指に装備していた《黄金林檎》の印章(シギル)。同じものを私も持っているから比べればすぐにわかるわ」

 それを戻すと、次にもう一方、黄金に煌く細身の指輪をそっと取り出した。そして、それと同時にヨルコは、溜まっていた涙を弾けんばかりの勢い、形相で告げた。

「そしてこれは……これは! 彼女がいつだって左手の薬指に嵌めていた、あなたとの結婚指輪よ、グリムロック! 内側に、しっかりとあなたの名前も刻んであるわ! ……この2つの指輪がここにあるということは、リーダーは、ポータルで圏外に引き出されて殺されたその瞬間、両手にこれらの装備をしていたという揺るぎない証よ! 違う!? 違うというのなら、反論をしてみせなさいよ!!」

 涙混じりの絶叫が周囲に木霊する。頬には大粒の雫が流れ続ける。
 真っ直ぐにつきつけたその箱を見て、グリムロックは凍りついてしまっていた。最早、言い逃れができない決定的な証拠だったからだ。
 
「何でなのグリムロックっ! 何でリーダーをっ! 奥さんを殺してまで指輪を奪ってお金にする必要があったのっっ!!??」


 ヨルコが、そう訴えた瞬間、頬を伝っていた大粒の涙も、弾けとんだ。そして、その言葉に対するグリムロックの答えは、想像していたそれと違った。

「…………金……?金だって?」

 その笑いに、戸惑っているように眉を寄せるヨルコを見上げ 次いでオレ達を順番に見渡し、グリムロックは乾いた声で笑っていた。そして、左手を振り、メニューウインドウを呼び出すと、短い操作でオブジェクト化させる。

 オブジェクト化させたのは、やや大きめの革袋。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ