11部分:第十一章
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
「貴女もそうすればいいのに」
突き放した言葉を投げ掛ける。その言葉もまた楽しんでいた。
「違うかしら」
「本当に意地悪ね」
あらためてそれを言う。
「貴女という人は」
「その意地悪を楽しんでいるのは誰かしら」
それでも言葉の鞭を緩めない。サデスティックに楽しむ。
「誰なのでしょうね」
「言うわね、本当に」
「私は言っているのじゃないわ、言わせられてるのよ」
「そうして言葉で苛めるのね」
「それもいいのではなくて?」
「否定はしないわ」
佐智子の方でも楽しんでいるのを認めた。どうやら彼女はマゾヒズムであるらしい。整った切れの鋭い美貌からは想像できないものである。
「ではまたね」
「ええ。その間はまた」
「焦らされてあげるわ」
「ふふふ」
沙耶香はコートを羽織り警視庁を後にした。紅の雪の中を進みながらあることを考えていた。
「雪・・・・・・紅の雪」
自身の周りに降り続ける雪を眺めながら呟く。
「若しかしたら」
そこに何かを感じていた。だがそれはまだ確信となるには程遠かった。彼女はその日は酒を楽しみ夜を過ごした。手掛かりは何もなかった。
次の日も雪は降り続いていた。それが終わる気配がない。
沙耶香は朝の街を歩いていた。今は人がそれぞれの学校や職場に向かう時間であった。
多くの者が歩いている。それはただ歩いているのではない。この雪のせいで車も電車も満足に動かなくなりだしている。そのせいであるのだ。
このままでは本当に首都機能が停止してしまうだろう。それが危惧されだしていた。沙耶香もそれは知っている。それを解決する為に呼ばれたのだから。
沙耶香は今新宿駅のところにいた。そこにただいるのではない。探っていたのだ。人の気配を。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ