第壱章
弐……武働キハ如何程カ
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「そうだ! 戦、終わってないんだろ?」
「ああ、そうだが……まさか、行く気か!?」
「それ以外に何があるッ」
家康の制止も聞かず、陣から出て敵兵の林を斬って払った。しゅんっと音を立てて左の血吸い刃が鎧を切り裂く。そこから勢いよく鮮血が噴き出し、力が湧いてくる感覚がした。
物の怪だ、と聞こえた。
確かになと笑い、また切り裂く。
「ひぇぇ、こ、こいつ、化け物だぁぁ!!」
「獲物を逃す馬鹿がいるか」
今度は心臓部分を貫き、抉った。嗚呼、心地好い。「生」の味だ、
「ああ、美味い」
思わず浮かべた笑みはとても不気味だった様で、敵兵は僕を見たまま怯えきっている。だって仕方無い。美味い血を持つお前達が悪い。
気付けば周りに敵はいなかった。あるのは、地面に染み込んだ鮮血と、少し血の足りない死体ばかり。
明らかに僕らの勝利だった。
僕の方も、大分満足した。お腹いっぱいだ。
「ふぅ……さて、戻りますか」
「村正!」
陣へ戻る為振り返った時、家康の声がした。走り寄って来たのが見える。
「大丈夫だったか? これは……」
大丈夫、と頷けば彼は安堵の息を漏らす。
「僕、勝利に貢献出来たか?」
「ああ。陣形が崩せず、困っていた所だったんだ。もしかして、一人で?」
「うん。『食欲』が湧いてしまってね」
「食欲」と聞いて、家康は驚いた様だ。一応事を説明し、納得はされたものの僕と話す彼の態度がぎこちない。まあ恐れるのは当然だ。
戦の終わりだ。陣払いを済ませ、小牧城へと戻った。
ここでの食事は摂らず、夕餉の際には一人刃を研いでいた。
切れ味が増している気がする。
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