第四章
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「漫画とか小説の設定でな」
「適当ですか」
「実は違うからな」
「じゃあ普通に」
「正しいことの象徴でな」
「邪悪でもないんですね」
「チベット仏教の卍がこうなんだよ」
逆になっているというのだ、日本の卍と。
「それだけなんだよ」
「日本の仏教とも全然違いますね、確かに」
チベット仏教自体がそうであることもだ、大山は言った。
「ですから卍もですか」
「違うってことさ」
「同じ仏教でも」
「仏教でも国によって違うからな」
「確かに。日本の仏教とタイの仏教も違いますね」
大山はこの国の仏教も思い出した。
「あそこは敬虔な仏教国ですけれど」
「日本の仏教と全然違うな」
「それでチベット仏教も違う」
「卍も含めてな」
「そういうことなんですね。わかりました」
しみじみとしてだ、大山は言った。だが彼にとって不思議なことはまだあった。それで春日にそのまだある不思議なことについて問うた。
「けれど何でナチスはチベット仏教の卍を自分達の紋章にしたんですか?」
「ああ、そのことな」
「はい、どうしてなんですか?」
「ナチスはアーリア人至上主義を掲げていただろ」
「はい」
このことはあまりにも有名で大山も知っている。
「極端な人種主義で」
「そのアーリア人はチベット発祥だってな」
「ナチスは言っていて」
「それでチベット仏教の逆卍をな」
「自分達の紋章にしていたんだよ」
「そうだったんですね」
「まあ実際はな」
ここでだ、春日は持論を話した。
「アーリア人、つまりゲルマン人がチベット発祥かというと」
「それはヒトラーの思い込みですね」
「俺はそう思うけれどな」
「インド人もアーリア人ですよね」
「元々はな」
遥か昔のことだ、骨格を見ればインド人は確かに白人なのだ。髪の毛や目の色は黒になっているがだ。
「そうだったよ」
「カーストの上の人は特に」
「ああ、アーリア人だよ」
「それでもですね」
「実際にアーリア人がチベット発祥かどうか」
「根拠はあやふやですか」
「学術的にはインド北西部発祥ってなっているな」
チベットではなく、というのだ。
「チベットはインドの北東だろ」
「はい」
「北西は中央アジアだからな」
「そこは違いますな」
「あと逆卍はシュリーマンが発見していてヒトラーがそれをインド=アーリア語族のシンボルって考えもしたしな」
こうしたこともあってというのだ。
「ナチスは逆卍を使ってたんだよ」
「そうだったんですね」
「だから別に逆卍自体は邪悪でもなければ」
「チベットじゃ普通にありますね」
「そうなんだよ」
まさにというのだ。
「だからな」
「そうしたことは」
「それぞれの国で違うんだよ」
「いや、ハーケンクロイツは」
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