9部分:第九章
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「その中の。何なのかしら」
「ロッシーニです」
イタリア十九世紀前半の指揮者だ。ベルカントオペラの大家であり様々な作品を作曲している。また大変な美食家としても知られている。
「ロッシーニ!?じゃあ演目は」
「セビーリアの理髪師です」
「いいわね」
演目を聞いた沙耶香の目が楽しげに細まる。
「ジミーが一番好きな作品ね、ロッシーニだと」
「そうですね」
ロッシーニの最大の傑作の一つである。モーツァルトの傑作フィガロの結婚の前のストーリーに当たる作品であり楽しい喜劇だ。彼が作曲する前にパイジェッロも作曲しており初演の時には騒ぎにもなっている。
「では。今から楽しみにしておくわ」
「有り難うございます」
「それでね」
さらに言うのだった。
「ワインが欲しいわね」
「ワインは何を」
「お国のワインを」
妖しい笑みを作って述べた。
「お国といいますと」
「決まってるじゃない。アメリカのワインよ」
実はアメリカもワインの産地なのだ。カルフォルニアワインがそうである。これが意外といけるのだ。ワインは欧州だけではないのだ。
「カルフォルニアのね」
「お客様。かなり洒落た方ですね」
ボーイは沙耶香がそのアメリカのワインを頼んだのを見て顔を緩ませてきた。
「あら、それは何故」
「アメリカのワインを頼まれるからですよ」
「それが何故洒落ているというのかしら」
「日本の方はどうも」
ここで言葉を濁すのだった。
「何かというとフランスやイタリアのワインを好まれるので。我が国のワインは」
「確かにね」
これは沙耶香も知っていた。やはりフランスやイタリアのワインは日本ではかなりの人気だ。実際に美味い。あとはドイツのワインだ。これもいいと評判だ。
「あまり一般ではないかもね」
「そこで頼まれるとは。これまた」
「どの国のワインもいいものよ」
沙耶香は笑ったまままた述べた。
「アメリカのワインもね。味わいがいがあるわ」
「有り難い御言葉です」
「ただ。欲を言えば」
「はい?」
ここで言葉が微妙になる。沙耶香はまた言うのだった。
「もう一つ欲しいわね」
「もう一つですか」
「ワインに必要なのは」
笑ったまま言葉を続ける。
「何かしら」
「それは様々ですが最もオーソドックスなのは」
「チーズね」
それであった。ワインに最も合うものの一つと言えばやはりそれであった。
「いいのはあるかしら」
「無論です」
ボーイは笑顔で答える。
「カンサスのいいものが」
「ではそれをもらうわ」
話はこれで決まった。奇麗なまでに。
「いいかしら、それで」
「是非共」
ボーイの言葉にも屈託がない。
「どうぞお召し上がり下さい」
「ワインは二本ね」
沙耶香はこう付
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