3部分:第三章
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第三章
少し感じた後で唇と唇を離す。舌と舌を一条の唾液がつないでいる。沙耶香はそのつながっている自分の舌と彼女の舌を見て楽しんでいたが彼女は目からもう涙さえ溢れさせていて身体を小さく震わせていた。
「駄目よ、まだ」
沙耶香はその彼女に対して言う。
「これからなんだから」
「けれど私、もう・・・・・・」
溶けそうな声になっていた。口をはしたなく開けて息を荒くさせていた。最早完全に沙耶香の虜になろうとしていた。
「このままじゃ」
「ふふふ、それでもよ」
その彼女に対して述べる。
「これからなのだから。じゃあいいわね」
「はい」
沙耶香の言葉にこくりと頷いた。
「御願いします」
そのまま香の腕の中に堕ちる。沙耶香はその堕ちた獲物を心ゆくまで貪るのだった。
スチュワーデスを一人アンカレジにおいて堪能した後で辿り着いたのはニューヨークであった。美貌の摩天楼は今は昼だった。
「夜だとよかったのに」
空港から出た沙耶香はまずはそこに不満を感じた。東京の夜があまりにも美しかったので今度は摩天楼の夜を楽しみにしていたのだ。
しかしそれは適わなかった。それを残念に思いながらマンハッタンに入る。街は喧騒に満ち車も人も溢れ返っていた。そこはまさにニューヨークだった。
所々にお洒落と言っていい派手な外見の男女がたむろし様々な肌の人間が朗らかな顔で笑っている。スーツに身を包んだビジネスマンは携帯を手に何かを話しておりファーストフード店では若い男や女がハンバーガーやホットドッグを片手に英語で話をしている。黒人の若い青年はヘッドホンを着けてラップの動きを少ししながら歩いている。ビルは空を突かんばかりに高くそれが幾つも連なっている。信号と信号の間に無数の車が走りその間を人が行き来している。ショーウィンドゥーにはそれぞれマネキンが鮮やかな服を着て並びその横ではアイスクリーム屋がある。そこはまさにニューヨークであった。
沙耶香は今そのマンハッタンの中を歩いていた。そのまま暫く歩きある店の前まで来た。そこは占いの店だった。一人の魔女みたいな外見の老婆がうずくまるようにして店の中居座っておりその店の中には怪しげな魔術に使うと思われる様々な道具が置かれていた。沙耶香はその店の中に入ったのであった。
「おや、早いね」
「そうかしら」
沙耶香はその老婆に対して微笑んで応えた。
「これでも結構時間がかかったのだけれど」
「少なくとも遊ぶ時間はあったようじゃな」
老婆は沙耶香を見て妖しい笑みを浮かべながら述べた。
「いい香りがしておるわ」
「わかるのね」
沙耶香はその言葉を受けて楽しげな笑みを見せてきた。
「わかるとも。この香りは美女じゃな」
「そうよ」
楽しげな笑みのまま答える。
「なかなか。楽しめたわ」
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