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逆さの砂時計
侵食する意思
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いきなりな態度に気分が悪くなるが、此処に居るのは神父クロスツェルであり、信徒らしき人間だ。それらしい言動を心掛けねばならない。
 「いや。なかなか面白い姿だと思ってな」
 「…………面白い?」
 なんだ? クロスツェルは普通の神父姿をしているだけだ。何処に面白いと感じる要素が……
 ……待て。この声には覚えがある。ずっと昔から知っている。
 芯が通った、力強くも甘い声。
 これは……この男は。
 「そうだろう? 数万の時を経ても滅多に見ない傑作だと思うがな。……殺したい相手に仕える気分はどんなものだ? ベゼドラ」
 反射で数歩後ろに飛び退いた。
 やはりそうだ。アリアに封印された時にも聞いた声。かつては悪魔の頂点に座していた男。
 「貴様……レゾネクトか!!」
 髪の長さも容姿も見知ったそれより幾らか若いが、色彩と声だけは変わっていない。闇に属する者の、王。
 「何故貴様がこの世界に居る!? アリアが現れる以前に異空間へ飛ばされた筈だ!」
 レゾネクトは両肩を持ち上げ、祭壇に向き直った。女達を喰っていたまさにその場所を指先で辿り、愉快そうに口角を上げる。
 「神父の魂を喰い、その器で処女を犯していた……か。悪魔としてはまずまずの働きだが、美しい遣り方とは言えないな。……なるほど。急いていたのか」
 「……!?」
 「結界が壊れた理由は「クロスツェル」と……「ロザリア」………… っ!?」
 レゾネクトの口元から笑みが消える。細い目が見開かれ……突然。
 祭壇が、バギン! と、音を立てて二つに裂けた。
 「貴様…………アリアを汚したか!!」
 レゾネクトの怒号に合わせ、礼拝堂に紫色の稲妻が三本走った。
 凄まじい轟音と風圧が木製の椅子を弾き飛ばし、壁に掛けられたタペストリーを引き裂く。
 神父の体も軽々と吹き飛ばされ、礼拝堂の入口付近の壁に叩き付けられる。
 「が……っ! は」
 体の奥で、砕け、潰れる鈍い音がして、喉から赤黒い血が噴き出した。
 稲妻が収まり、激痛に苛まれた体が崩れ落ちる。
 「貴様、消滅する覚悟あっての事だろうな!」
 「っぐ……!」
 歩み寄って来たレゾネクトに腹部を思いきり蹴飛ばされ、踏み付けられた。吐き出した血がレゾネクトの足先を濡らす。
 「……貴様はアリアを憎んでいたな。封印された時はさぞ屈辱だったろう? だから、これで存在を消し去ってやるよ、ベゼドラ。死の間際まで彼女に敗北する苦渋を思い知れ」
 そう言ってレゾネクトが構えたのは……淡い薄緑色の、弓矢。
 「……な……んだ、と」
 それはアリアの色。アリアの力。
 闇の王レゾネクトが持ち得ない筈の、神聖なる光。
 闇を滅ぼす、女神の力。
 「眠りすら無い、虚無に散れ。ベゼドラ」
 光の弦が引き絞られる。見開いた
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