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幼馴染みがTSしたので欲情しないようにするのが大変なんだが
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客、だと……?」

 アホか、と思わず内心で悪態をついた。このとんでもない豪雨の中、何を思って我が家に来るか。

 諸事情で一人暮らしである俺は、さびれたアパートの一室を借りてそこで暮らしている。此処は三階だ。雨宿りがしたいなら一階にいれば良いものを、何ゆえ三階まで上って来たのか。
 さては悪質ないたずらかなにかだな、と見当を付け、放っておくことにする。

 しかし。

 ピンポーン、ピンポーン、ピピピピピ……

「うるせぇよアホォォォォッ!!」

 チャイム連打についにブチ切れた俺は、勢いをつけて玄関のドアを開いた。バァン! という音と共にそれが全開になると同時に、「うわっ」という甲高い声と共に、何者かが後ろに下がる気配。

「……あ゛?」

 『ソイツ』は、一人の少女だった。

 長くて艶やかな黒髪。大きな瞳。小さな鼻に形の良い唇。三次元女子の美少女は基本的に嫌いな俺でも見とれてしまうレベルの美少女だった。
 しかしその美少女ぶりとは対極的に、髪の手入れはいささか……というかかなり雑で、纏っている服もぼてっ、とした男物。何故か破けている。雨に濡れて肌に張り付いていて、何というか凄まじくエロい。

 何だこいつ……という疑問と共に、呆然と其処に突っ立っているソイツに向かって問う。

「誰だあんた。何の用だ」
「え……? あ……あっ!」

 すると黒髪少女はより一層呆然とし、直後、弾かれたように鋭い声を上げた。キョドってるのか知らないが、何を言いたいのかさっぱりわからん。

 取りあえずそのことを言おうとすると、しかしそれより一瞬早く、少女が信じられない事を言った。

「ぼ、ボクだよセージ……! 葵だ、小野塚葵!」
「……はぁ?」

 思わず口から疑問詞が漏れる。
 
 意味が分からん。小野塚葵は女顔ではあったが、一応は普通に男だ。強暴な俺よりはそこそこモテたし、というか幼少期から一緒にいる俺がこいつが普通に男であることを何より知っている。

 だがなんとなく理解できるところが無くもない。彼女の口にした『セージ』という名前は、俺の『誠司』から取ったあだ名……と呼べるのかは知らないが、とりあえずニックネームだ。『せいじ』ではなく『せーじ』と真ん中を伸ばすのがポイント……ってそんなことはどうでも良くてだな。
 このあだ名を呼ぶ人間はそう多くない。俺の身近では葵しかいないだろう。

 ということは即ち。

「お前……本当に葵なのか……?」
「そ、そうだよ! 言ってるじゃないか、さっきから!」
「誕生日は?」
「九月六日!」
「趣味は?」
「読書とカードゲーム!」
「小学生の時に好きだった女の子の名前は?」
「と、隣のクラスの秋葉ちゃん!」

 ……合っているな。
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