狂宴
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耗品だった。
死ぬまで消えない物をくれたのは、クロスツェルだけだった。
自分だけの、自分を表す固有名詞。
小さいからチビとか、そんなんじゃない。
自分を形作る名前。
クロスツェルがくれた存在証明。
「私はロザリアだ」
だけど、名前をくれたバカは、もうどこにもいない。
クロスツェルと同じ顔をした男は。
クロスツェルと同じ声で「ロザリア」とささやきながら。
同時に「アリア」とも呼ぶ。
さすがに二ヶ月も経てばいろいろと慣れてきたが、気分は最悪だ。
「……そうだな。お前は『ロザリア』だ」
燭台をテーブルの上に置いて……
ふと、ベゼドラの目が細くなる。
「また、食べてなかったのか」
パンにスープにサラダ、果物、その他諸々。
三食分きっちり残っているのを見て、呆れたため息を吐いた。
「最悪一食分は消費しろと言った筈だ。今のお前はただの人間なんだぞ」
「誰が食うか、そんな物。ふくよか女が好みなら、ガリガリに痩せてやるよ」
初めの頃は、ただただ気持ち悪くて食欲が無かった。
行為と状況に慣れ始めてからは、空腹感に負けて食べられるだけ食べた。
余裕が出来た今は、食べたら生物的に負けって気がする。
「……ロザリア……」
深い深いため息の後。
ベゼドラがスープ皿を手に取って、ロザリアに歩み寄る。
考えを読み取り逃げようとしたら、首輪を掴まれて壁に押し付けられた。
「痩せていようが太っていようが、死ななければ良いんだよ」
「最低だな……っ ん、ぅっ」
自らの口に含んだスープを、口移しで無理矢理、喉に流し込んでくる。
手足をバタつかせて抵抗しても、ベゼドラは一切気にせず。
皿が空になるまで同じことをくり返した。
「……げほっ……か、っは……っ こん、の……悪趣味、がっ……!」
「初めから大人しく食べていれば、まったく必要ない行為なんだがな……。それとも、こうされるのがお前の望みか?」
「冗談……っ」
「なら、自分で食べろ。次に同じことをしたら犯しながら口に突っ込むぞ」
「発想が汚いな……ちくしょう」
ロザリアが口の端から溢れたスープを腕で乱暴に拭うと。
ベゼドラは苦笑いを浮かべて、スープ皿をテーブルに戻す。
その顔が一瞬、クロスツェルに見えた。
「っは……はは…………」
「?」
「いや。私も案外、諦め悪いなーと思ってさ」
礼拝堂で女を喰い散らかす姿に、クロスツェルの面影は欠片もない。
はっきり言って、行為もコイツ自身も気持ち悪い。
なのに、時々クロスツェル本人を感じるのは。
体そのものはクロスツェルだから……なんだろうか。
「お前が何をどう望もうと勝手だが、ここか
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