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黒魔術師松本沙耶香 仮面篇
17部分:第十七章
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いて煙草を吸い終えた。それからすっと姿を消した。彼女が次に姿を現わしたのはタリータウンであった。そこにある城の前にいた。
 入り口の左手にはチェス盤が再現されている。闇の中に浮かび上がる白と黒のコントラストは幻想的な童話を思わせるものであった。
「不思議の国のアリスね」
 沙耶香はそのチェスを見て呟いた。
「ただ。ここにはアリスはいないようだけれど」
 この城はホテルである。かつてはカトリックの男子寮であった。そこに入るとすぐにホテルマンが二人やって来て彼女の案内をするのであった。
「予約はしておられるでしょうか」
「ロイヤルスイートだったかしら」
 沙耶香は何気ない素振りでこう言ってきた。
「確か」
「それでは」
「日本から来られた」
「ええ」
 ホテルマン達の言葉に答える。
「沙耶香よ。松本沙耶香」
 そうして自らの名を名乗った。
「予約はしてあるわね」
「はい、こちらに」
 ホテルマンの一人がファイルを見ながら答えた。
「確かにあります」
「それでは」
 もう一人が案内する。そうして沙耶香はそのロイヤルスイートに入るのであった。部屋の中はカトリックの趣きは少なくむしろ家の感じがした。落ち着いた造りであった。

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