「誕生日は滅多に言えないことを言える絶好のチャンス」
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料理を待ち、それから数分もしないうちに器に盛られた二つのラーメンをそれぞれ食べ始めた。
すっかり日が暮れて肌寒い風が吹く。そんな夜に食べるラーメンはいい感じに身体を温める
「よくもまぁそんなに食えるな。オメーの胃袋は宇宙か」
「ブラックホールだ」
ラーメンをすすりながら愚痴る銀時に双葉は平然と言う。
ピザ10枚でも相当腹がふくれるのに、双葉はチャーシュー大盛りラーメンをぺろりと平らげていく。ほっそりした容姿の割に、見かけによらず彼女は大食いなのだ。
双葉の食欲はどんどん満たされていくが、逆に銀時の財布はどんどんしぼんでいく。
「財布ごと吸いこむんじゃねェ!」
「言っただろ、ガキ二人のお守代だ」
「……だからって今日じゃなくってもいいだろーが」
ぐれるように銀時は呟く。その表情はどこか寂しげだった。
「………」
ふいに自分の器にあったゆで卵を双葉は銀時の器に移す。
「ん?」
「私はこれくらいしかできないから」
そうして今度はチャーシューを移してボソリとこう言うのだった。
「…誕生日…おめでとう…」
そうして双葉は顔を背ける。それはほんのり赤くなった頬を隠すかのようだった。
一方で銀時は器に浮かぶゆで卵とチャーシューを見つめる。
「……忘れてると思ったか」
「いんや。覚えてたんだろ。知ってっぜ」
そう言って銀時は妹からのささやかなプレゼントを味わうのだった。
* * *
小さな街灯だけで照らされた夜道を歩く銀髪の兄妹。
銀時は財布を上下にふってみるが何も出てこない。中身は完全に空っぽだ。
「おいおい明日から銀さんどうやって生きてきゃいんだ。酒も飲めねーじゃねェか」
「いいじゃないか。二日酔いしなくてすむ」
「そういう問題じゃねーよ!」
「いらない荷物背負ってるからいつも泣くはめになるんだ。食べたいモノを食い尽くすだけのブラックホールはあのデカ犬よりタチが悪い」
蔑むように双葉はごく僅かに黒い笑みを浮かべていたが、ふいにその瞳が暗くなる。
「迷惑でしかないな……」
陰が差しこんだその瞳でただ呟く。
「だから嫌になったらいつでも――」
「バカヤロー」
ふと双葉に差しこんでいた陰が消える。
ポン、と銀時が彼女の頬に拳を当てたのだ。
「途中で投げ出すくらいなら、最初っから背負わねェよ」
不意を突かれ何も言えなくなった双葉に銀時は面倒くさそうに告げる。
「何もできねェどうしようもねェって突っ立ってたらそれでシメーだ。ンな野郎と一緒にいたくもねーが……テメェは違ェんだろ?」
「え?」
唐突に言われ双葉は首を傾げるが、銀時はフッと笑って歩き出す。
「恩返しなんて大それたモンいらねーよ。今度パフェ食わせろ」
そう手を振りながら
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