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【銀桜】6.野良猫篇
「誕生日は滅多に言えないことを言える絶好のチャンス」
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それとさっきの話――」
 双葉は白ネコに顔を近づけおもむろに人差し指を口に当てて

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「兄者には内緒だぞ」
 薄く笑みを浮かべて言った。
 白ネコはそんな双葉の忠告に対して


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「にゃ」
 と軽く叩くように彼女の頬に前足を当てた。
 そしてカウンターを飛び降りて耳のないネコ達と一緒に店から出て行った。
「……可愛くないネコ」
 頬杖して野良猫たちが通った戸を見ながら、双葉はぼそりと呟いた。

* * *

 数日後。
 昼の賑わうかぶき町を、銀髪の兄妹が歩いていた。
「なんで俺がテメーのピザまで払わなきゃいけねェんだよ」
 銀時が札の少ない財布の中を苦い顔で眺めながら言う。
「数日のガキお守(もり)代安いもんだろ、ピザ10枚」
 その隣で双葉が無表情に告げる。
 行方知れずだった銀時は昨日ひょっこりと万事屋へ帰って来たが、どこに行ってたのかうやむやなまま話さない。
 翌日、パフェを食べにいく銀時の後を勝手について来た双葉は、たくさんのピザを注文した。社長がいない間の万事屋のまとめ役代と称しながら。
「ったくやっと帰って来たのにおかえりもなしでピザ奢れかよ」
「嫌なら二度と勝手に遊び歩くな」
 そう双葉は冷たく言い切って銀時のやまない愚痴に水をさす。不機嫌な妹に銀時は頭をかいて渋々ながら口を開く。
「遊び歩いてねーよ。(ダチ)とフラフラしてただけだ」
「そうか。ならそのダチにも奢ってもらんといかんかもな」
「そいつは無理だ。奴ァ俺のことなんざ分かんねェだろーからよ」
「……?」
 事の意味がよくわからず首を傾げるが、銀時は何も言わない。
 その態度に腹が立ち、双葉はますます不機嫌になる。
「なら兄者が全部奢れ。次はラーメンだ」
「まだ食う気かっ!」
 銀時の財布の悲鳴も無視して双葉は先へズンズン歩く。
 その時耳のない野良猫が横切ったのを妹は気づかなかった。
 だが兄は足を止めて振り返る。
「兄者、どうかしたのか?」
 それに気づいて振り返ってみると、何かを見ている銀時の姿があった。
「……いや。なんでもねーよ」
 そう言って銀時は妙に澄ましたようにほくそ笑んで先を歩いて行く。
 訳がわからない双葉は何を見ていたのか探してみるが、それらしいモノは見つからない。仕方なく銀時を追うように再び歩き出した。

 かぶき町のボロ家の納戸が汚されていたことに気づかずに。
 野良猫の小便で「ありがとうダチ公」と。

* * *

「オヤジ、ラーメン2つ」
「チャーシュー大盛りゆでタマ付きでな」
 川辺にひっそり営むラーメンの屋台に銀髪の兄妹が入る。
 注文の付け足しに兄は苦い顔をするが妹はただ座って
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