「誕生日は滅多に言えないことを言える絶好のチャンス」
[2/5]
[1]次 [9]前 最後 最初
「ニャッ!?」
ビクっと身構える白ネコ。腹黒い笑みを浮かべて見下ろす双葉。
「与えられたからには恩を返すのが礼儀だろ、人間もネコも」
「ニャーニャー!ニャニャー!!」
「まぁまぁそう固くなるな」
暴れる白ネコを掴み上げ双葉はそのままカウンターに置く。
何をされるのかと怯えるようにビクビクする白ネコだが―
「黙って私の愚痴を聞け」
「にゃ?」
「へ?」と聞こえそうな間抜けな声をもらす白ネコ。
だが双葉は気にせず愚痴を話し始めた。
「野良猫は大変だな。その日のエサも自分で取らなければ生きていけない。だが飼われてる猫よりは自由きままに逞しく生きていて正直尊敬する」
「………」
「私の兄者も自由きままで……お主たちと似ている。尊敬はできんがな」
「………」
「チャランポランで甲斐性もなくだらしのない兄者だ」
「………」
「昨日からフラフラ出かけて帰ってこない。全く、どこをほっつき歩いてるんだか」
「………」
「自由きままは野良猫だけにして欲しいものだな。人間だと迷惑のなにものでもない」
「………」
「……まぁ。私も人の事は言えないけどな」
「にゃ〜?」
首を傾げる白ネコに双葉は溜息をつきながら『愚痴』を続ける。
「昔、勝手に別れを告げて突き放した。もう会わないつもりだった」
「………」
「なのに私はここにいる。あんなことをしたのに兄者は何も言ってこない」
「………」
「ただ万事屋にいさせてくれる」
「………」
「正直、また兄者と一緒にいられるなんて思いもしなかった」
「………」
「そう、まだ支えられてる。こんな歳になってもな」
「………」
「ああ、ずっと迷惑をかけっぱなしだ。単なるお荷物だよ、私は」
「………」
「わがままで、そのくせ何もできない、どうしようもない妹さ」
「………」
「だから……どうやって恩を返したらいいのか分からないんだ」
「………」
「いつも護られてばかりで」
「………」
「そんな私が兄者に何ができるのか。探してはいるんだが見つからない」
「………」
「お主だったらどうする?」
「………」
「……なんてネコのお主に聞いても仕方ないな」
双葉は苦笑して白ネコの頭に優しく手をのせた。
「黙って聞いてくれてありがとな。ピザもどきが食べたかったらまた来い。私の愚痴つきだけどな」
そう言って双葉は白ネコの頭を撫でる。
くるくるしてる毛の割にはさわり心地がとても良く、何だか懐かしさを感じる。
できればもっと撫でていたい。しかし耳のないネコが他の仲間を引き連れ戸の前で鳴いている。そろそろ時間のようだ。
「なんだ、もう行くのか。そうだ。兄者に会ったら伝えてくれ。もうすぐ誰かの誕生日だが戻ってこな いなら何もやらん、と。
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ