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【銀桜】6.野良猫篇
「誕生日は滅多に言えないことを言える絶好のチャンス」
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[1] 最後

 その夕方、双葉はスナックお登勢のカウンター席の端っこでピザもどき(ピザトースト)を頬張っていた。
「双葉様、あまりお元気がないようですね」
 カウンター内に立つたまが淡々と言う通り、双葉はつまらなそうに食べていた。
 しかし大好きなピザを食べる時でも双葉は無表情だ。知らない人からすれば味気なくただモグモグ口を動かしてるだけにしか見えない。
 今日も普段と変わりない……と他人からはそう見えるだろう。
 だが実際双葉は落ちこんでいた。それは毎日カウンターで見てるたまだから分かる事だ。
「私の分析では銀時様の不在が原因と……」
「黙っていろ」
「了解しました」
 苛ついた眼に言われた通り、たまは次の命令が来るまでその場で沈黙する。
 久々に依頼が来て新八たちと出かけた銀時は、そのまま帰って来ない。
 新八の話によると「用を足してたはずなのにいきなりいなくなった」とのことで、昨日から行方知れずだ。
 野良猫退治にいつまで時間をかけてるんだ、と双葉はたまお手製のピザもどきを不機嫌にむさぼる。
「あらら。こりゃ珍しいお客さんだ」
 お登勢が開けた店の戸から数匹のネコとゴリラが入って来た。
 そんな珍しい小さなお客たちをお登勢は店の余りモノで持て成した。
 相当腹が減っていたらしい。ゴリラはバナナを口へ投げこみ、白と黒のネコはムシャムシャと余りモノのごはんに食いついている。
「あんたがここに来るなんて何年ぶりだろうかね。にしても驚いたよ、あんたが友達連れてくるなんてさ。あたしゃてっきりまだ一匹でつっぱってるもんだと思ってたよ」
 まるで旧友と再会したかのようにお登勢は耳のない猫と話している。ただ猫は椅子の上でふて寝していて無愛想だ。
「お登勢殿、知り合いか」
「昔ちょっと世話してやってのさ。こいつは敵作るのばかり上手くてね。でも不器用なだけで根はいい奴なのさ」
 お登勢がそう言うと耳のない猫はプイッとそっぽを向く。実に可愛くない。
 いつもの双葉なら猫に――可愛いモノに人知れず胸をトキめかせるが、今日はそんな気分にならない。こっちも無愛想に何枚目かのピザもどきを口に投げこむだけ。
「ん?」
 一匹のネコが双葉をじっと見ている。
 くるくるした毛むくじゃらの白い猫は眠たそうな半開きの瞳で何か言いたげに覗きこんでいるようだった。
「なんだ、欲しいのか」
 とろけるチーズとベーコンがのった食パンのピザもどきを差し出すが、白ネコは興味なさそうに顔を背けた。
「そうかそうか。そんなに欲しいのか」
 エサ皿に戻ろうとする白ネコを持ち上げ、双葉は食べかけのピザもどきを押しつける。
「ほら食え」
 白ネコは少し悩んでるようだったが、腹が減ってるせいかピザもどきに食いつき残さず全部食べた。
「にゃ〜」
「……食ったな」
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