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支え
4部分:第四章
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いから」
「悲しまない」
 女中はその言葉がやけに耳に残った。
「だからね、どうなってもいいんだよ」
 それを聞いていてふと潤子が言った言葉が思い出した。好きな人がいればやっていけるといった意味のあの言葉を。その時ようやく理解したような気分になった。 
 その足で屋敷に向かった。まだ暑い道をである。その年は例年になく暑く感じられた。まだ朝だというのに昼のように暑かった。服の上からジリジリときた。
 屋敷に着き奥に向かう。ふと話し声がしているのがわかった。
「誰かしら」
 男の声であった。しかも若い。
「あの声は」
 聞き覚えのある声だった。彼女もよく知っている。潤子の声も聞こえる明るいものであった。その明るい声を聞いて確信を持った。
「いらっしゃい」
 潤子は部屋に来た彼女に笑顔を向けた。その隣に彼がいた。
「戻って来られたのよ」
「左様ですか」
 それを聞いて彼女も笑みを作った。
「よくぞお帰り下さいました」
「はい」
 忠行はそれに頷いて応えた。
「色々ありましたが」
「はい」
 女中はそれに頷いた。
「それでも。よくぞ戻られました」
「有り難うございます」
 忠行はうっすらと笑っていた。だが何処か力のない笑みであった。
「御国はこうなってしまいましたが。それでも帰って参りました」
「忠行様」
 そう言う忠行に対して潤子が声をかけてきた。
「何でしょうか」
「確かに負けてしまいましたが。それで終わりではないと思いますよ」
「どうしてでしょうか。この戦いで皇国は多くの者を失いました」
 女中はそれを聞いて先程の女のことを思い出した。彼女は全てを失ってしまっていたのだ。
「はい」
 潤子はそれに頷いた。
「それでこれからどうすればいいのか。貴女がおられますが」
「だから忠行様はこちらに戻られたのですね」
「ええ」
「ではそれでいいと思います。そして私のところに帰られたことに対して心から御礼を申し上げます」
「御礼を」
 忠行はそう言われてかえって戸惑いを覚えた。
「はい。以前御国と私が大事だと仰っていましたので」
「ええ、それは覚えていますよ」
「だからこそ戻って来られたのだと思います。それが心より嬉しいのです」
「そうだったのですか」
 それを聞いて心が救われる気がした。
「これからも私の側にいて下さいますか」
「残念ですがそうもばかりはいられません」
「どうして」
「私は医者ですから。貴女の他にも救わなければならない方々がいます。それに」
「それに?」
「貴女の胸を治す薬を。今それを集めているのですね」
「私の胸をですか」
 それを聞いて大いに驚いた。
「けれど私の胸は」
「治ります」
 忠行は優しい声でそう言った。
「必ず。そうした薬ができた
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