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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
20.また出会う日まで
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ばしの沈黙の後、先に矛先をひっこめたのはヘスティアの方だった。
 ばつが悪そうに頭を下げ、自己嫌悪から顔を顰める。

「あー………本当に何も知らないみたいだね。ごめん、急に喧嘩腰になっちゃって。そっちのキミも済まなかった。はぁ……親の罪は子の罪にはならないよね」
「てめぇが何を勘違いしてるか知らねぇが、こいつは『ユウ・ジェグナン』だ。少なくともこの町ではな」
「覚えておくよ。ついでに君の名前も聞いていいかな?」
「………『ジャン・アンガルド』だ」

 ヘスティアは当然、二人の名前が偽名であることには気付いている。だがその上で――ユウが『グリード』の血縁だということも分かった上で、これは自分の早とちりだったと認めざるを得なかった。事実、目の前の少年はどこまでも澄み切った瞳をしている。むしろ彼の透き通った目は、ベルのそれに近い。きっと母親に似たのだろう。

 ユウも未だに事情はつかめていないが、ともかく誤解が解けたらしいことを察してかほっと一息ついた。ジャンもこれ以上追及しないのならと矛先を収める。もうヘスティアの顔はいつもの姿に戻っていた。

 ユウの家族にはどうもやんごとなき事情があるらしいが、あの態度の豹変ぶりから見るとかなり根の深い問題らしい、とリングアベルは認識ししばらくこの件には触れない事を決めた。

 ………なお、ジャンの「ヒモ女」とは服装的なヒモの話だったのだが、ヘスティアが別の意味で捉えてかなり心にグサッときていたのは永遠に明かされない秘密である。

「……それで、二人とも見舞いに来てくれたのか?」
「あ、はい!それもあるんですけど……実はそろそろ僕たちイスタンタールに帰らなきゃいけなくて……お別れに来たんです」
「ま、そういうことだ。これでも学生なんでな。余り長居はできねぇのさ」
「む…………そ、そうか。二人ならいい冒険者になれると思ったんだがな……行ってしまうのか」

 なんとなく勝手に仲間になった気であったために、相手が学生であったことをすっかり忘れていた。彼らの本業は学生であり、今回の件にも単純に巻き込まれただけでしかない。ならば別れが来るのも自明の理というもの。

「改めてベルたちにも紹介したかったんだが、そんなに時間が押してるのか?」
「それもあるんですが……どうも俺達がオラリオの揉め事に巻き込まれた話がこれ以上長引くと、イスタンタールとこの町の関係悪化の要因になりかねないらしいんです」
「俺としては格上相手と戦えてそれなりに満足だったんだが、上の方はそんな事情知らねぇからな……もしガテラティオにこの話が知れたら双方どんなイチャモンがつくか分かったもんじゃねぇ」

 中立という立場でいると、よそからのちょっかいが鬱陶しくなる。特にオラリオは神主導の国家からも正教圏の国家からもその
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