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支え
1部分:第一章
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ある家柄だという。忠行は士族の家に生まれた。二人は幼い頃にそれぞれの両親により許嫁とされていたのである。潤子が跡取り娘であり忠行が次男坊である為であった。だが二人はその頃はまだそれを知らなかった。
 知るようになったのは尋常学校に上がってかなり経ってからであった。二人はそれを聞いた時互いに不思議に思ったものであった。
「なあ潤子」
「なに?」
 忠行に声をかけられた潤子は手毬を動かすのを止めて彼に尋ねた。
「俺は御前の旦那さんになるらしいぞ」
「わたしが忠行さんの?」
「ああ」
 彼はよくわからないまま答えた。潤子はそれを聞いて首を傾げた。
「じゃあわたし忠行さんの奥さんになるの?」
「そうらしいな」
「それで子供ができるの?」
「それは知らない」
 忠行も首を傾げて答えた。その時右手に持っていた棒も忠行が首を傾げた方に傾いた。
「けれど俺と御前は夫婦になる決まりらしいな」
「そうなんだ」
「だから潤子」
 忠行はここで急に真剣な顔になった。その時の顔のことを潤子は今でも覚えている。
「御前は何があっても俺が守るな」
「守ってくれるの?」
「ああ」
 忠行は答えた。
「俺は侍の家にいるしな。それに妻を守るのが夫の務めだ」
「それが忠行さんの仕事になるのね」
「そうだ。だから御前は俺が絶対に守る。いいな」
「うん」
 幼い潤子はそれに頷いた。もう気が遠くなる程の昔のことである。
 それから忠行は中学校に入りそこから海軍に入った。頭のいい彼は軍医になったのである。
 時が来れば潤子が妻になる筈であった。しかしその直前のことであった。
 潤子が胸の病を患ったのである。結核であった。婚礼は中止となった。潤子は今いるこの奥の間に一人で置かれるようになった。そして部屋に入って来るのは女中と舞鶴に赴任することとなった忠行だけであった。彼がここに赴任になったのは話を聞いた海軍の上の方の情であるとも言われていた。
「外はどうなっていますか?」
 潤子は忠行に尋ねた。
「外ですか」
「はい。戦の方は」
「皇国に敗北はありません」
 彼は強い声でそう答えた。
「それは安心して下さい」
「はい」
「この雪が溶けて夏の日差しが入り込むようになった時には戦争は終わるでしょう」
「そうでしょうか」
 もう何年も続いている戦争である。そう簡単に終わるとは潤子には思えなかった。一人床についていてもそれだけはわかっていた。
「戦争が終われば私は貴女の側に参ります。今以上に」
「そしてどうなさるのですか」
「貴女の病を完全に治して御覧に入れます。それが私の役目ですから」
「お願いできますか?」
「はい」
 やはり強い声であった。
「必ずや。やり遂げてみせます」
「有り難うございます」
 潤子はその気
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