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奇跡はきっと
6部分:第六章
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第六章

「只今」
 髪は随分と伸びてしまっている。額は半月を思わせる生え際である。その半月が目の方から出ている、そうした形になっていた。
 目は細く一重で横に一直線の感じだ。眉も同じく太くはないが濃いものが一直線になっている。鼻はしっかりとした形で口もまた真一文字だ。その男がマチに挨拶したのだ。
「帰って来たよ」
「御飯あるよ」
 マチはその男ににこりと笑ってこう告げた。
「さあ、早く食べるんだよ」
「で、御飯何かな」
 男もマチに応えて笑顔で言う。
「お袋の漬けた茄子の漬け物ある?」
「勿論だよ。たっぷりじゃないけれどあるよ」
 玄関をあがり背中の荷物を置いた息子にまた告げた。
「さあ、白い御飯もあるしね」
「何か久し振りにお袋の飯が食えるんだな」
「そうだよ。二人で食べようね」
「ああ。久し振りに」
 こんな話をしながら家に入るのであった。これが彼の帰った時だった。
「本当によかったよ」
 サクもこのことを手放しで喜んだ。
「裕二郎ちゃんが帰って来て」
「だからちょっと帰って来るのが遅かっただけなんだよ」
 しかしマチは笑顔でこう言うだけであった。
「ちょっとだけね」
「そうかい。ちょっだけなんだね」
「そうだよ。ちょっとだけだよ」
 またこう言うマチだった。
「ちょっとだけね。遅かっただけだよ」
「そうだよね。やっぱり」
 そしてサクもその言葉に納得して頷いた。
「ただ遅れただけだよね」
「あの子は昔からそうなんだよ」
 やはりただ遊び過ぎた子供が遅くに家に帰って来たかのような言葉であった。
「昔からね。帰るのは遅いから」
「そうだね。それだけだね」
 サクはまた笑顔で頷いた。まさにその通りだと納得したからである。そうしてサクのにこやかな満面の笑顔をまじまじと見るのであった。
 そしてそれはサクだけではなかった。あの屋台でもそうだった。
「戻ったらしいな」
「そうだな」
 若者とねじり鉢巻が話をしていた。またカレーを作っていた。
「まさか本当に戻って来るなんてな」
「奇跡みたいだな」
 ねじり鉢巻はカレーの鍋をかき混ぜていた。煮立って焦げ付かないようにする為だ。
「ここで戻って来るなんてな」
「奇跡か」
 若者もその言葉に応えた。
「そうかもな。本当にな」
「それでな。覚えてるか?」
 ねじり鉢巻はここであらためて彼に声をかけてきた。
「あの話。覚えてるか?」
「ああ。確かあれだろ?」
 若者は皿に飯を入れながら相棒の言葉に応えた。
「息子さんが戻って来たら皆で贈り物しようってな」
「それだよ。こっちはカレーな」
「よし、じゃあやっと作れるようになった」
 若者は相棒が今かき混ぜているそのカレーを覗き込んだ。
「このチキンカレーを婆さ
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