暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十九話 襲来
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ネンカンプ提督が問い掛けると皆が頷いた。まあ無理もないだろう、あの巨大なガイエスブルク要塞がワープ? 到底信じられない。
「大丈夫だ、既に三十回以上テストしているが一度も問題は生じていない」
シュトックハウゼン提督が答えると彼方此方で嘆息が漏れた。それを見てシャフト技術総監が満足そうに頷いた。

「安全のため航行は急ぎません。イゼルローン要塞へは時間をかけてゆっくりと進みます」
「では戦闘状態に入るのはフェザーン方面の方が先になりますな」
ビッテンフェルト提督が幾分不満そうに言うとエーリッヒが“そうですね”と言ってクスクスと笑った。

「作戦会議でも説明しましたがフェザーン方面とイゼルローン方面を比較すれば要塞が有る分イゼルローン方面の攻略は難しいと同盟軍は考えるでしょう。フェザーン方面で戦闘状態に突入させておいてイゼルローン要塞を攻略すれば……」
エーリッヒが意味有り気に言葉を止めた。
「フェザーン方面の反乱軍は簡単に退けない。無理な撤退をすれば甚大な被害を受ける」
俺の言葉にエーリッヒが頷いた。ニコニコしているが相変わらず辛辣だ。

「それにしても楽しみですな。イゼルローン要塞対ガイエスブルク要塞か」
「トール・ハンマー対ガイエスハーケン、確かに見応えが有る」
レンネンカンプ提督とビッテンフェルト提督の言葉にざわめきが起きた。派手な要塞主砲の撃ち合いを想像したのだろう。

「要塞主砲の撃ち合いは発生しないと思いますよ」
エーリッヒの発言に皆が訝しげな表情をした。
「ガイエスブルク要塞はイゼルローン要塞にぶつけます」
“ぶつける!”、彼方此方で驚愕の声が上がった。
「イゼルローン要塞を攻略する必要は無いのです、破壊すれば良い」
「……」

皆、顔を見合わせている。何処かで“破壊”と呟く声が聞こえた。普段感情を表に出さないアイゼナッハ提督も信じられないといったように頻りに首を振っている。それを見てエーリッヒが軽く笑い声を上げた。全く途方もない事を考える男だ。溜息が出た。
「イゼルローン要塞には民間人も居ます。物理的に破壊すれば彼らも死ぬ事になる。そう脅せばヤン・ウェンリー提督も降伏するでしょう」
「……」
皆、声が出ない。ただエーリッヒを見ている。エーリッヒがカップをソーサーに置くと静まり返った部屋にカチャリと音が響いた。

「その後は一気にイゼルローン回廊を駆け抜けハイネセンを目指します」
「……」
「イゼルローン要塞陥落によって混乱した反乱軍に防衛体制を再構築させる猶予は与えません。迅速さで彼らを圧倒します。それによって抗戦の意志を根こそぎ奪う、百五十年続いた戦争を終結させるのです」
エーリッヒが分かったかとでも言うように俺達を見渡す。彼方此方でカップをソーサーに置く音が起き皆が姿勢を正して
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ