来訪者
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が尋ねると、青年はじっと少年を見つめた。その視線の意味は、すぐに分かった。
「………それは、分かってるから。その他に。」
その質問に青年は答えなかった。もう一度訊ねようとすると、横からくいっとコートの脇を引っ張られた。
「ユイ?どうかした?」
「………。」
少女は腕をまっすぐ伸ばし、国の方を指さした。その意味が分からず聞こうとすると。
「時間だ。……行くぞ!」
そう青年の勇ましい声が聞こえ、少年と少女は手を引かれた。無理やり黒馬に乗せられたかと思うと、猛スピードでその場から遠ざかった。
「何!?なんで!?」
「………っ。」
少女は無表情だが、怯えたように少年にしがみ付いた。これから起こることを知っているように。
「答えてよウィル、ユイ!何があるの!?」
「百聞は一見に如かず、だ!」
ざっと森から抜け、屋敷に着く。その前には少年の母親と姉が立っていた。
「"ハイヴァン"…。何か?」
「本気かよ?別に現状維持でも良いだろ?」
「よくありません。」
「………ちっ。おいレリー、離れろ。」
「嫌よ。あなたの言うことなんか聞かない。」
「いいから………、」
青年は両手を広げ、指を鳴らした。大声で叫びながら。
「離れやがれ!!!」
青年の周りに蛇や豹や熊などの様々な動物が現れ、女性と少女に襲い掛かった。
2人は本を片手に同時に手を上げ、短い詠唱を終えた。
「………ウィル?」
眩い閃光や爆発音に目を閉じていた少年は、呆然と立ち尽くす青年に声をかけた。
「お前ら、それでも………、それでも魔導師かよ!」
青年が声を荒げて叫ぶ。青年の周りには何もなかった。ただ焼き払われた跡があるだけだ。
「ええ、魔導師です。では。」
女性は本に手を当てると、再び詠唱を始めた。少年にはそれが、空間転移の詠唱であることが分かった。
「…どこ行くの、母さん。」
「あなたは知らなくていいことです。」
「姉さん!」
「………。」
金髪の少女はただ前を見ていた。少年など眼中にないように。
「姉さん…。」
少年はその場に膝をついた。その反応を待っていたように、女性は言葉をつづける。
「あなたは大人しくしていること。それでは。」
そう言うと、2人の姿は掻き消えた。後には呆然とする青年と少年、そして無表情の少女が残された。
「俺は、やることがある。もう行くぜ。」
しばらく経った後、青年は突然そう言った。しかし異議を唱える必要などなかったため、少年はこくりと頷いた。
「…ユイ、行こう。歓迎するよ。」
少年は少女に手を差し伸べた。少女は差し出された手をじっと見つめると、その手に指で文字を書いた。少年は少女からの言葉に、微笑んだ。
「よろしく(Nice to meet you)」
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