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奇跡はきっと
3部分:第三章
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な」
「わからないか」
「駄目なんじゃねえかとは言いたくねえけれどな」
 復員兵服の男は首を捻り難しい顔をしだした。
「けれどよ、インパールでしかもそんな相手だぜ」
「ああ」
「やばいだろ、どう考えても」
 この言葉を出さざるを得なかった。
「戻って来れるのはよ」
「そうか、やばいか」
「露助に捕まった連中とどっちがひでえかな」
 当時は何が行われていたのかよくわかっていない部分があった。それに加えてとある新聞社がソ連を賛美する記事を書き連ねておりソ連という国家に対する認識がおかしくなっていた時期である。なおこのおかしくなっていた時期というのはソ連崩壊までである。
「本当にな」
「けれど婆さんは信じてるぜ」
 若者はこのことを話した。
「今でもよ。息子さんが絶対に帰って来るってな」
「そりゃ俺だって帰って来たらいいって思ってるさ」
 復員兵服は今度はすいとんのその団子を作っていた。流石にこれがなくてはすいとんではない。まさにそれがなくてはであった。
「それはな」
「しかしそれでもかよ」
「御前も死んでるなんて思いたくねえだろ」
「当たり前だろ。生きていてなんぼだぜ」
 それはこの若者とて同じであった。やはり彼も裕二郎に生きていて欲しかったのだ。彼にしろ復員兵服の男にしろ決して悪人ではないのだ。底意地が悪くもなかった。

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