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逆さの砂時計
クロスツェル
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も、私の力じゃ治せないぞ」
 苦笑いを浮かべる女に振り返って……湧き上がった衝動がクロスツェルの物なのか悪魔の物なのか、判別できなかった。
 心臓が跳ねる。血が騒ぐ。触れたい。抱き締めたい。無理矢理引き裂いて、声が出なくなるまで喘がせて、涙の一滴も逃さず全部を喰い尽くしたい。
 女が、アリアが、ロザリアが、欲しい。
 ……だが、まだ喰らわない。
 女神の封印は、完全には解けていないのだ。現時点で何の策も無く女神に手を下すのは難しい。
 「そう……、ですね」
 悪魔はクロスツェルのフリで笑う。
 水を蹴って池から出れば、女が背中を軽く叩いた。
 涙を気にしているらしい。下らないことに目が行くものだ。
 さて、復活の宴の準備を始めようか。お前の愛もこの体で叶えてやろう、クロスツェル。
 だからもう……その叫びを止めてくれ。
 「行きましょうか、ロザリア」
 胸の痛みを隠して、悪魔はロザリアに優しく微笑んだ。


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