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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
19.君はここにいてもいい
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、敢えて前へ進むことでダメージを最小限に抑えつつも突破を図ったのだ。

 だが、図体が大きいとはいえ相手も強力な魔物。リングアベルの狙いが自分の向こう側にいるミネットであることくらいは予測がついたのが、すぐさま空ぶった前足を引いて後ろを振り向こうとして――結果、ジャンとユウという二人の剣士が目の前にいる事を見落とした。

「ユウ!俺の教えた剣術、忘れちゃいねえよな!!」
「分かってる!!バレストラ流剣術………『バイソンの構え』ッ!!」

 構えた剣を地面に垂直に、そして残った腕を利き腕に沿える。それは魔物に匹敵する突進力を持つとさえ言われる巨体の獣、バイソンを彷彿とさせる不動の構え。ジャンの家、バレストラ家が代々継承する二つの構えの内の一つである。

 本来、バイソンの構えは相手の攻撃を確実に受け止めつつカウンターを狙う防性の構え。
 だが、バイソンの構えにはそこから敵に攻撃を繰り出し、更には攻撃特化の構えに流れるように変化する連続攻撃奥義がある。ジャンは、当時剣術で虐めてきた同級生をぶちのめすためにそれをユウに教え込んだことがあった。

 攻撃を防がれたり躱されてバランスを崩した相手を前に、その防御に込めた力を素早く反転させて猛烈な勢いて吹き飛ばす、逆転の一手。

「いくぜ、獅子野郎!!盾さえ吹き飛ばす猛牛の角撃を見せてやるッ!!」
「これぞ奥義……『バイソン・ホーン』ッ!!」

 二人の若き剣士が放った猛牛の如き突進が、焦るビスマルクの側面に激突した。
 重量、パワー、体力、その全てにおいて勝るビスマルクが、意識外の衝撃に思わずたたらを踏む。通常なら考慮する必要もない一般人の攻撃が、絶妙なタイミングに同時二発。しかも然るべき技量を持った人間の手で叩き込まれたことが、元階層主を一瞬揺るがすだけのダメージを与えていた。

 バレストラ流剣術は、正教圏では極めれば例え神の恩恵を受けた相手だろうと打倒しうる最強の剣術を謳っている。その理由の一つに、構えから構えへと次々に移っていく隙のない戦法がある。『バイソン・ホーン』は、そこからもう一つの攻撃特化の構え、『ウルフの構えに』に繋がる奥義でもあるのだ。
 すなわち、ジャンとユウは『バイソン・ホーン』を放った時点で既にウルフの構えに移行し、そこから更に連続で奥義を叩きこもうとしていた。全身から噴出する苛烈なまでの気迫が二人を纏い、二振りの剣が煌めいた。

「まだまだ!もう一発だぁッ!!」
「獅子のお前に狼の牙撃を教えてやるよ………奥義、『ウルフファング』ッ!!」

 二人同時に、狼が獲物に牙を突き立てるような猛烈な振り下ろしを叩きこむ。
 寸分の狂いもなく、先ほど『バイソン・ホーン』を叩き込んだ位置に同時二発。二人の抜群のコンビネーションなしには決して実現しない奇
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