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東京百物語
赤い手青い手
四本目★
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日紅に縋り付かれていた藤原が手を挙げた。



「何だ、藤原上等兵。発言を許す」



「はっ。畏れながら。山下二等兵の彼氏なる者ですが、フルネームを聞いてからもう一度敵か味方かの判断を下されてはいかがでしょうか?」



「どういう意味だ?・・・山下二等兵ッ!」



「はっ、はいぃぃぃい・・・!」



「貴様の彼氏なる者、名字を何という」



「き、木下ですぅ・・・木下犀と申します・・・」



「何ィ!?木下、だと!?」



 坂田が再び激しく机を叩く。あまりの剣幕に、日紅はぶるぶると震えて藤原の陰に隠れた。それからゆっくりと顔をあげる。



「オイシー♪」



「やっぱり、ここのたらこスパ間違いないよねー!」



 目の前には、何事もなかったかのようにパスタを食べ続ける三人。日紅は即座に藤原の肩を連打すると、呆然と震える指でその様子を指さした。藤原は肩をすくめると、「恋する乙女は時に中尉にもなっちゃうのよ」とよくわからない名言を残した。
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