6部分:第六章
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そういうことには歴史においてはなっている。例えそれが一般市民を狙った無差別攻撃、一説によると実験であったとしても。そういうことになっているのである。
「戦犯を差し出せ、ということじゃ」
「戦犯ですか」
「どれだけの人間が裁かれるかわからんがな」
「勝った者が負けた者を裁くのじゃ」
「戦争で、ですか」
「わし等は罪人だったそうじゃからな」
二人の言葉はさらに悲痛なものになっていく。
「じゃから。裁かれるそうじゃ」
「皆、ただ普通の戦争をしていただけなのにな」
「そうなのですか・・・・・・」
「若し鐘があったらのう」
神主はまた言った。
「信じる気にもなれたのじゃが」
「日本の大義を」
「わし等は確かにそれを信じていた」
「そして今まで生きてきた」
「大東亜の為に、と思ったのも本当じゃ」
「日本が生きる為に、と思ったのもな」
「そうじゃないってことになるんですね」
「無念じゃがな」
「罪人には語る資格なぞない。そういうことじゃろうな」
「じゃあ今までのことは」
「もう語ることも許されんかもな」
神主はまたぽつりと呟いた。
「そして別の話になっていく」
「立派に戦った兵隊さん達も。貶められてな」
「私は戦争を戦ったわけではないです」
神父は僧侶が兵隊さんと言ったことに顔を上げていった。この日はじめて顔を上げた。
「けれど。あの兵隊さん達は」
日本を信じて純粋に戦った。そう言いたかった。大義を信じて。しかしそれすらも語ることが許されなくなる時が来ようとしている。神父の中で誰かが語る気もしてきた。
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