5部分:第五章
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大義であったのだ。この二つの戦争に勝ち日本は生き延びることが出来たのだ。若し負ければ日本はなかった。ましてやロシアとの戦争は。最後の最後まで誰もが勝てるとさえ思わなかった戦争であった。それでもしなくてはならなかったのだ。アメリカとの戦争もそれと同じであった。しなければ生きられない戦争であったのだ。
八紘一宇が題目に過ぎないと言われようとも。誰にでも生きる資格はあるだろう。それを否定するならばまずその否定した者が生きる資格を失う。日本にも生きる資格があったのだ。生きる為の大義もそこにあった。だからこそそこにいた殆どの者がこの戦争を支持したのだ。東亜の大義だけでなく生きる大義も。彼等はその為に戦争に加わったのだ。
「アメリカにもそれがあるように私達にもあるのです」
「そう言って頂けると有り難いです」
大尉はそこまで聞いて顔を綻ばせた。
「日本にも大義がある、それがわかれば」
そしたまた述べた。
「私も喜んでそれに殉じることが出来ます」
「大尉・・・・・・」
「それでは私は最後まで海軍軍人として戦いましょう」
意を決した声であった。
「そして生きます。最後の最後まで」
「御武運を御祈りします」
「何、襟は正します。恥は見せません」
「はい」
「海軍として、日本人として。生きてみせます」
「その御姿、最後まで拝見させて頂きます」
「見ておいて下さい、私の生き様を」
「最後の最後まで」
大尉だけでなく多くの者が意を決しようとしていた。己が最後に向けて。やがて沖縄の戦いが終わった。多くの犠牲を払いながらも結局沖縄は陥落した。そして。夏がやって来た。暑く長い夏が。
この夏にはおかしな話が舞い込んできた。それも二つも。
「広島がなくなったらしいぞ」
神主はまた自分の社に僧侶と神父を集めていた。そして語った。
「なくなったじゃと!?」
「うむ、何でも一発の爆弾でな」
「馬鹿を言え」
僧侶は最初その話を一笑に伏した。
「幾ら何でもたった一発の爆弾で街がなくなるか」
「爆撃じゃないんですか?北九州や福岡みたいに」
神父もそれを信じようとはしなかった。どう考えても有り得る話ではなかったからだ。
「いや」
だが神主はそれを否定した。その細い首をゆっくりと左右に振った。
「間違いないそうじゃ」
「馬鹿な」
「街が」
「それにの、長崎もおかしいのじゃ」
「どうしたのじゃ!?」
「さっきラジオを聴いていたのじゃ」
「うむ」
「長崎とな、急に連絡が取れんようになったらしい」
「まさか」
「まさかとは思うがのう」
「アメリカは何か新しい兵器を作ったのでしょうか」
「そこまではわからんが。広島が大変なことになって長崎がどうなったのかわからんようになったのは事実じゃ」
「長崎が」
神父の
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