暁 〜小説投稿サイト〜
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第二十話
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
 確かにこれならば斬る、突く、叩く、薙ぐ、払うもできるだろう。ただ難点なのがナチュルが言った通り従来の薙刀と掛け離れた重心操作、そして何よりも上記の攻撃手段を全て操れる技量が必要になる。
 最初は三日月状の刃は薙刀の名残かと思ったけど、あえて逆剃りにすることで攻撃範囲と鋭利さを飛躍的に上昇させているのが解る。この発想を得るのにどれだけの苦労があったかは推して計るべし。
 鍛冶以外は大雑把と自他共に認めるナチュルが、半年以上前に描いた設計図を保管していたということは、彼女自身も会心のデザインだと感じたからなのだろう。

「それでは私、そろそろ行きますね」
「引き止めて悪かったわね」
「いえ、私の方こそ。この槍、ありがとうございました」

 そのデザインを完成させてやりたいと思ったなら、それを可能にする材料を深層から持ち帰るのみだ。今すぐにとはできないけど、いつか必ずそうしたいと思った。私のことを慕ってくれる人のために。

 よし! 今日は良いダンジョン日和になりそうだ!



 そう思っていられたのも僅かだった。ナチュルの工房を出て、最近見つけたバベルまでの近道を歩いていたときにばったり出くわしたのだ。

 ぼろぼろのベルに肩を貸すアイズに。

「なっ───」

 私とばっちり目が合ったベルは、なぜか顔面蒼白になってアイズと私を忙しなく見渡し、急いで離れようとしたところをしっかりアイズに腕を固定されているためつんのめる。いったい何がしたいんだ君は。

 アイズはというと、私のことをいつものお人形のような無表情でじぃーっと見つめてきており、離れようとするベルの腕だけはがっちり握っている。肩を貸しているのだから当然だけど、なぜかベルは凄い焦って離れようとしている。

 で、どうしてか彼らの肩越しにある物陰から真っ黒な気配がビンビン漂ってるんだけど、いったいどういう状況なんでしょうかね? 耳を澄ませれば「あはははははっはははははあはっはははははは」とか聞こえるし……。アイズ気づいてないのかしら。

「お二人とも、何をしてるんですか?」
「びゃ!? こ、これは別に変なことをしてたわけじゃなくて──」
「レイナ、このことは誰にも言わないで……」
「ア、アイズさん!? もうちょっと言葉を選んで!?」

 何か、二人が訴えてきていることが微妙にかみ合っていないような……。もしかしなくともアイズの方が正しいんだろう。ベルはちょっと何を言ってるのか解らないですね。
 そうこうしているうちに物陰に潜む黒の何かがだんだん遠ざかっていき、やがて小さな笑い声も聞こえなくなった。ちょっと壊れかけたおもちゃみたいな印象を受けたけど、きっと無関係だよね?

 それにしても、誰にも言わないで、と来ましたか。何かいけないことで
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ