第二十話
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る階層だからねぇ。Lv.6の冒険者の立場で言えば、Lv.2の冒険者が手こずる階層を踏破する感覚かな? まあ、真に恐ろしいのはLv.10でも手こずる階層でLv.8のヘラクレスが普通に戦えていたことなんだけど。
五十一階層以降の大体を語り終えたところで、ナチュルがそれとね、と前置きを入れて聞いた。
「みんなが必死になって目指してる六十階層って、どんなところだったの?」
周りがテストに向かっている最中で模範解答を覗き見るような、そんな背徳感を感じているのか、わずかに強張った頬。しかし、ナチュルが実際に見ることができるわけではない。
言っていいものか迷った挙句、こう返した。
「何ていうか、静かな場所でしたよ」
「静か……?」
「五十台の階層とは大違いでした」
《竜の壷》が炎をメインにしているならば、六十台の階層は水だった。古代林のような捩れ苔た木が水面からたくさん突き出ており、モンスターは控えめである。もちろんそいつらは凶悪の一言だけど、五十台の階層の苛烈さと比べればマシだ。私もよく六十台の階層に持ちきれなくなった新発見のアイテムを寄せ集めていたものだ。
こういうときに情景を絵のように保存できるアイテムが欲しいと思うんだよね。それを魔法道具屋さんに言ったら「無茶振りにもほどがあるわ」と怒鳴られたけど。今はあるのかな? 探してみよう。
「まあ、その他はお楽しみです。きっとそう遠くないうちに六十階層に到達できるはずです」
「はぁ……早く新しい鉱石見つからないかしら……」
興味があるのはそこかい。前世で使ってた武器がそれに当たると思うけど……。あっ、だから薙刀の出自を聞いたのね。気が向いたら必要だった材料を教えてあげよう。
心底困ったように頬に手を添えてため息を付くナチュルは、そっと近くに落ちていた設計図に目を落とした。釣られて覗き込むと、そこには斧槍に似た絵と、それを作るのに必要な材料の理想が書き込まれていた。
私の視線に気がついたのかナチュルはその設計図に目を向けたまま言った。
「これね、半年くらい前に思いついたデザインなのよ。だけどその通りに作るとどうしても武器の先端に重心が置かれちゃって使い難かったわ。だから軽い素材が必要だったんだけど、今じゃそれを満たす材料が無くてね。久しぶりに掘り出したから気になったのよ」
「それにしても中々奇抜ですね」
「ふふ、素直に『子供が思いついたような物』って言ってくれていいのよ?」
「いえ、そこまでは言いませんけど」
まあ、見せられて改まれば誰か思いつきそうなデザインではある。槍のような刃の両側に左右対称に三日月状の刃が付いている物だ。ただ、これに至るまでノーヒントだったのを考えると、やはりナチュルは凄い人だと改めて思う。
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