第二十話
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「じゃあ、よろしく……お願いします?」
ちょこんと首を傾げながらそう言い、アイズは愛剣の鞘を構える。よろしく頼まれた私は彼女にならい、今朝一番にナチュルから受け取った槍をいつものように構えた。
前世にもあったと思う市壁の上で、【ロキ・ファミリア】のエースにして、ついにLv.6に到達した天才少女アイズと対峙する。私と彼女しかいない市壁の石畳をそよ風が撫で、お互いの髪が揺れる。
天を仰げば黒天に瞬く星が私たちを照らし、ふと視線をずらせば内側の都市の姿を一望できる。魔石灯の光がひとつ、またひとつと消えていっては、違う区画から新たな光が灯される。随分遅い時間帯のはずだけど、この都市は夜が更けてから本業発揮する場所の方が多い。
さて、ぎりっと槍の柄を握り締めた私。
……いったい、どうしてこうなった?
◆
「はい。頼まれてた槍よ」
「おぉ! ありがとうございます!」
全長は私の丈ほどあり、白銀製なのか放たれる金属光沢が冷たく鋭い。対照的に柄の握り手には燃えるような赤い革がなめしており、余って垂れたそれが絶妙に気品を際立たせる。これが店に並べば0の数が最低でも5つは付くはずだ。そこにナチュルが手がけたと書き加えればもう一桁増えるまである。
Lv.1の冒険者には握ることすら許されない品質の槍。それをナチュルは躊躇いなく私に手渡した。
頼まれていた、というので解る通り、この槍はナチュルにお願いして作ってもらった一品だ。完全な薙刀を目指し日々鉄と己を鍛錬している最中悪いと知りつつお願いしたら、思いのほかすんなりと受け入れてくれて、発注した二日後には完成させてくれていた。
前世の私に憧れて薙刀を作っているのに、その本人から違う武器を作れと言われるのだから、嫌な顔ひとつはされるだろうなと気構えていた私としては肩透かしを食らった気分だった。
訊ねてみると、「同じ長柄武器だから問題ないわ」とのこと。そして「それに薙刀だけじゃなくて槍も使ってたものね」とフォローしてくれた。ナチュルの工房にあった迷宮神聖譚を手にとって見ると、確かに槍も愛用していたと記述されていた。
私が薙刀を使い始めたのは冒険者人生の後半だからね。それまではずっと槍だったし、というか薙刀を知らなかったし。【撥水】とか編み出してるのも単に槍を使う機会が多かったからだしね。
順序的には 駆け出し(槍) → 二十年後(槍) → それ以降(槍・薙刀) → 終盤(薙刀) って感じ。長柄武器の心得を槍で学んでいたからすんなり薙刀も使えるようになったわけだ。もちろん根本が似てるだけで勝手が違う武器だから慣れるのに結構時間はかかった。
ともあれ、どうしてナチュルに槍を作ってほしいと頼んだかというと、私もそろそろ本腰
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