暁 〜小説投稿サイト〜
バフォメット
8部分:第八章
[1/3]

[8]前話 [1] 最後

第八章

「あそこにいる悪魔が。どうしてだ」
「そしてその悪魔は」
「何をしているのでしょうか」
 周りの者達はたまりかねて彼に問うた。あまりにも教皇がいると主張するから。
「言っておるのだ、わしに」
「何と」
「こっちへ来い、こっちへ来いとな」
「こっちへですか」
「神の代理人である私を地獄へ引き込むとな。そんなことがあってたまるものか」
「教皇様」
 彼のあまりもの狼狽に誰もが困惑していたが緋色の法衣の者が彼に言ってきた。枢機卿だ。教会においては教皇に次ぐ地位と栄誉を手に入れている者だ。
「まずはお休みになられて下さい」
「休むのか」
「そうです」
 こう彼に告げる。
「今は。宜しいでしょうか」
「そうだな。悪魔はまだ見ているが」
 枢機卿の言葉を受けることにした。とりあえずは。
「ではそうしよう。後は頼むぞ」
「はい、お任せ下さい」
 こうして教皇は共の者達に連れられてその場を後にする。後には枢機卿達が残るが彼等の困惑した顔はそのままであった。
「何がどうなったのだ」
「悪魔だと」
 顔を見合わせて言い合う。
「その様なものは見えない」
「何処にも」
 彼等には見えていなかった。何も。だから顔を見合わせて言い合っているのだ。しかしここで。その枢機卿が彼等に対して告げたのだった。
「いや、心当たりがある」
「何と枢機卿様」
「それは一体」
「雄山羊の頭を持っているのだな」
 彼がまず問うたのはそこであった。
「そして女の乳房を持っている。そうだな」
「はい、教皇様の御言葉ですと」
「その通りです」
 そこにいる者達は口々に彼の問いに答えるのだった。
「ですがその様な悪魔は」
「聞いたことがありません」
「テンプル騎士団の悪魔だ」 
 だが枢機卿は言った。その悪魔が何者なのかを。
「それだ」
「テンプル騎士団」
「あの異端の」
「そうだ。バフォメットだ」
 枢機卿はその悪魔の名を知っていた。これは彼が教皇の側に仕えているからだ。教皇が作り上げた悪魔だということも知っているのだ。
「それがその悪魔の名だ」
「バフォメットですか」
「それがその悪魔」
「しかし。何故だ」
 悪魔のことはわかった。だが枢機卿はそれでもわからないことがあった。それを呟かずにはいられなかった。
「何故あの悪魔が出て来たのだ。教皇様の作られた悪魔に過ぎぬのに」
「のろいでしょうか」
 誰かが言った。
「呪いか」
「はい、テンプル騎士団の」
 神父の一人がこう言うのだった。
「我等が陥れ殺していった彼等の」
「彼等の呪いか」
「違うでしょうか。そう考えれば有り得ますが」
「ううむ」
 枢機卿はそれを聞いて考える顔になった。真剣なものだった。
「確かにな。それは」
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ