暁 〜小説投稿サイト〜
K's−戦姫に添う3人の戦士−
2期/ヨハン編
K17 正義のために悪を貫け
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
らが何か勝負事をしたわけでもないのに、確かに先ほどのやりとりには勝敗があり、勝利を掴んだのはヨハンのほうだったのだと思った。

「――ドクターへの恭順。それがあなたの答えなのね、ヨハン」

 マリアが俯いたまま呟いた。

「偽りの想いで世界は守れない。セレナの遺志を継ぐことなんてできやしない。全ては力。力がなければ正義を成すことなんてできやしない。だからドクターにああ答えた。そういうことなのね?」
「ああ」

 肯いた声は、調が知るヨハンの声の中で一番低く、暗かった。

(そんなのイヤだよ。だってそれじゃ、力で弱い人たちを押さえ込むってことだよ。そうしないで人を助けることができるって言われたから、わたしもきりちゃんも付いてこうって。なのに。マリア。ヨハン。二人ともどうしちゃったの? どうして変わっちゃったの?)

 考えていた調の前で、ヨハンが唐突に跪き、調の手を取った。
 戸惑う調にお構いなしに、ヨハンは調の手の甲に、騎士が姫君にするように、口づけた。

「大丈夫。例え道具にされたって、心まで支配されることは絶対ありえないから」

 先と異なり、どこかさびしげな微笑み。こんなヨハンを調は知らない。

「それが偽りの“フィーネ”とその騎士ではなく、マリア・カデンツァヴナ・イヴとヨハン・K・オスティナの選択なのですね」
「――――」
「はい」

 マリアとヨハンを見つめていたナスターシャが、咳き込んだ。

「「マムっ」」

 調はナスターシャの手を取った。

 ヨハンが立ち上がってナスターシャを見下ろした。

「今日の騒ぎでマムの体には相当な負担があったはずです。今日はもう休んでください。明日からのことは、明日に考えましょう」
「――そうですね」

 ヨハンが車椅子を押して部屋を出ていく。
 調はヨハンの背中を見つめていたが、彼の真意は読めなかった。






(こわい)

 未来はケージの中、膝を抱えて顔をそこにうずめた。

 ――東京スカイタワーで響が戦いに行った直後だった。床を突き破ってマリア・カデンツァヴナ・イヴが現れたのは。


 “死にたくなければ来い!”


 マリアが伸べた手を、未来は掴み返した。

 敵であっても、命が助かるならば。響が言うように、生きるのを諦めてはいけないと思ったから。

(響。早く来て)

 部屋のドアがスライドした。未来はびくんと肩を跳ねさせた。
 入ってきたのは、ヨハンだった。

「まだ起きていたんですね。……こんな硬い床で眠れるわけもないか」

 ヨハンは歩いてきて未来の正面に立った。
 彼が床に置いたのは、薄い毛布と、湯気の立つシチューの入った器と、ミネラルウォーターのペットボトル。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ