雪の白さに蓮は染まりて
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ですね、公孫賛殿」
亞莎からの鋭い一言。益州すら治められていない劉備勢力が吐くには大言壮語である、と。
貸し借りは無しと明言した以上、そう言っても構わない。ただ、この発言をしてしまうと“共存”というモノの根幹が崩壊する。
「私達が下、と言いたいわけだ? ふふ……別に益州は、戦を起こせばいつでも取れるぞ? 無理やり奪うのが嫌なだけだ」
呆れたように、誇らしいというように白蓮はため息を付く。
亞莎の視線が細まった。探りの意味を込めた一言が機能したことでより鋭く。ただし相手が悪い。王として軍師として将として生きてきた白蓮との経験の差は、確かにあった。
「私達は獅子身中の虫じゃない。お前達が袁術にした事の真逆をしてるんだ。血を流さずに変革してるんだよ、私達はな」
「……っ」
「現状は益州の半分以上が賛同してくれてる。黄忠達も仲間になってくれた。劉璋も安定を求めて変革に同意を示し始めてるし……残る問題は南蛮と荊州国境くらいかな」
「あ、あのっ」
自分達との差異を示され、そして内部の問題を知っているからこそ、蓮華達の口が開かれることは無く。
堪らず声を上げたのは、一人。
小さな姫君は、白蓮の話に多大な興味を抱いていた。
「ん? どうした?」
「その……殺さないで、戦をしないで……国を変えてる、の?」
「そうだけど?」
「反発する人達は?」
「納得してもらえるまで話してる。たまには対価を払う。金であれ、土地であれ、名誉であれ、役職であれ、人の命を害さないモノ限定で。武人の心を重んじてる人には実力を示すしかなかったけど……それでも人の命を奪う“戦”はしちゃいない」
「こ、殺そうと向かってきた人達は?」
「状況による。けど一概に反発の可能性だけで死罪確定なんてことは出来ない。法っていうのは線引きも大事だけど、情状酌量の余地もある。“分かってくれるよ”なんて甘いけどさ、“絶対に分かってくれない”なんてのも間違いだ」
ほう、と息を吐いた。
小蓮の心には期待の色が広がって行く。全く新しい方法で、自分達の家では絶対に出来ない遣り方。
「本当に出来てるの?」
「出来ることを証明しないと世界は変わらない。その為に私が此処に来た。孫呉と、戦なんかせずに共存していきたいから。そして……」
一寸だけ、白蓮の瞳が揺らいだ。
「ごめん、きっとこればっかりはあなた達を利用するってカタチになる」
包み隠さず話される事は不快さを全く齎さず。
激情の色と、悲哀の色と、絶望の色が綯い交ぜになったその眼は、蓮華に真っ直ぐ向けられた。
「……あの大バカ野郎を……徐公明を止める為に、孫呉の力を貸して欲しい」
最後に綴られた一言が、彼女達の頭に白蓮の哀しみの深さを訴えた。
「
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