雪の白さに蓮は染まりて
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く。
敵の思惑を回避しようとして、乱世の先を読めてしまうから、彼女の心労は日々徒然溜まって行く一方だ。
ただしある意味で、黒麒麟に恐怖と興味を持ったのは幸いかもしれない。
隣でずっと戦ってきた雪蓮が、冥琳が隠していた心労の大きさに気付けたのだから。
「一人で考え過ぎちゃダメよ? 私も一緒に考えるわ。とりあえず悪龍の策を私とあなたで打ち破る。その他のことはあなたの予想から私も判断を下す。それでいいでしょ?」
誰にも言えないような弱さも、必ず彼女が食い切ってくれる。
二人は断金。双頭の虎とでも評せる二人の関係は、持ちつ持たれつでもなくて、溶け合うように心身を重ねられるモノ。
ふっと息を付いた冥琳はやっと柔和な笑みを見せた。
「そうね。あの悪龍の策に嵌っていても、私達が生き残れば何度だって打倒出来る。生きているから機会を得られる。死んだモノには出来ないことをやりましょう」
自分達が死んでも後継者たちが繋いでくれる。劉表は確かに後を託したが……未来は決まっているわけでは無いのだ。
そうやって繋いで繋いで、信じることこそ孫呉の力。今は苦境の連続であろうとも、必ずこの先には幸せをカタチ作れる。
しかしだ。
彼女達は予期せぬモノを目に入れる。
ゆっくりと進む軍は遠くで上がる煙を見た。
どよめく兵士達を黙らせ、冥琳がその場所には何があるかを暗記している地図から呼び起こした。
「……村が」
洛陽から建業への行軍経路の最中、燃えた村は数々見てきた。
余りに酷い血だまり。虐殺されては復興が不可能。暮らす人々は賊徒に蹂躙された後で、息をするモノは一人も居なかった。
此処はきっと手が回っていない領域。多く集まり過ぎた賊徒百人の群れの幾つかが、時間を置いて集合した余計な集団。
陳宮なら、こうなることは分かっていたはずだ。いや、こうなるように仕向けているはずだ。
分けた賊徒は必ず集結する。死にたくなどないから寄り集まるのが人の群集心理。黄巾もそうやって面倒な集団となっていった。
きっとあの村には千を超える賊徒が押し寄せている。見るも無残に蹂躙されていることだろう。
脳髄が冷えて行く。冥琳の瞳の奥に、冷たい冷たい輝きが宿った。
「雪蓮」
「ええ……そろそろ、ね。私もダメだったのよ」
「分かっていると思うが無茶はするな」
一応、一応だ。言っておかなければならない。
横で顔を俯けて、肩を震わせているその戦姫には。
やっと取り戻した家が復讐の刃に切り刻まれている。悪龍を慕っていたモノの想いが、きっと其処には少なくともあったのだ。
自業自得だと誰かが言うだろう。けれども、そんなモノは知ったことでは無かった。
雪蓮は、愛する民を傷つけられ
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