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乱世の確率事象改変
雪の白さに蓮は染まりて
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かしい”。目に見えて才能が溢れている曹操なら分かる……だがやはり、黒麒麟だけは冥琳にとって異質に過ぎた。

――嗚呼……黒麒麟が何故、私には考え付かないモノを……

 心労は徐々に身体を蝕んで行く毒。智者としての恐怖と、軍師としての興味が黒麒麟を理解しようと思考を積んで、またそのモノを欲してしまう。
 恐ろしいから分かりたい。自分のモノサシで測りたい。そうして安心したい。それなのにやることが彼女の予測を悉く裏切って行く。そのせいでか、冥琳の目の下には色濃い隈が出来ていた。

 雪蓮は、それでも気丈に振る舞う冥琳に一度だけ声を掛けたが……二度目はなかった。雪蓮が口に出せばより明確にそのモノの異質さを際立たせる気がしたから。
 故に、敢えて問いかける。

 彼女達からはこう見える。表と裏、光と影、日輪と真月……そんな二人の覇王が全てを従えんと高みから見下ろしている、と。
 差異があれば、不和があれば、きっとその関係は脆く崩れ去るはずなのだ。互いが互いに喰らい合う。だから二人の関係に波紋を波立たせる小石が欲しい。

「……曹操が徐晃を客将として扱って、徐晃もそれを是としている。それでいて臣下の礼など一つも取らせず自分から取ろうともしない。片方が我欲を持っていない時点で綻びは有り得ん。それは……曹操の在り方から一番分かることだろう、雪蓮?」

 ただ、やはり答えは否。
 普通、才能がある者は野心を持つ。手が届くなら追い掛けてみる。自分が一番になれるなら、その望みは叶えたいはずなのだ。
 が、徐公明に野心は無い。そのくせ正式な将にならないのだから性質が悪い。そんなわけが分からない関係の二人に、こちらから離間などの手を打てば逆手に取られて返り討ちにされるだけだ。
 覇王曹孟徳は気にしない。徐公明がどんなことを考えていようと、野心があろうと反骨心があろうと、己の部下となったそのモノの事を、いや、“絶対に裏切らないと信じた自分を信じる”のだから。

「そうね……“私達には”二人の綻びを見つけることは出来ないし徐公明を利用することはもう手遅れ。出来る可能性があるとすれば……白馬の王だけか」
「ああ。明命に張コウが伝えたあの言葉、黒麒麟は間違いなくこちらを本気で潰しに来ているが……わざわざ徐州での話を口に出すということは何かしらの意図を隠してもいる。せめて劉備軍内部の詳細情報があれば助かるんだが……な」

 言伝は幾重の意図を含んで。孫呉の頭脳である冥琳の思考を束縛しに来たのは間違いなく。曖昧にぼかされた情報は敵なのか味方なのかすら分からせない。
 獅子身中の虫なのか、それとも本当に覇王と共に戦っているのか……それさえ分かれば手の打ちようはあるが、さすがに情報が少なすぎた。

 そうやって、冥琳の脳髄は日に日に許容量を超えて行
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