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惨女
1部分:第一章
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た。その彼女に対して側近である女官の一人が言ってきた。
「では留侯に相談されては如何でしょうか」
「留候にですか」
「そうです。あの方なら必ずいい御考えを出して下さるでしょう」
 留候というのは張良のことである。劉邦の軍師であり彼に天下を取らせることに多大な貢献をしてきた。だが人柄は無欲であり神仙に憧れその為劉邦が皇帝になってからは朝廷にいることも少なく隠居同然になっていた。その彼の策を受けよというのである。
「それで如何でしょうか」
「そうですね」
 当然呂后にしろ彼のことはよく知っている。そして彼が夫人とも縁がないことも。そうしたことも考え女官の言葉に従うことにしたのだった。
 こうして彼女は張良に話を聞くことにした。そのまるで美女の如き穏やかかつ細い美男子が后の前に参上した。后はすぐに周りの者を下がらせ二人きりになったうえで彼に対して問うのだった。部屋の中は静まり返り緊張が支配した。
「貴方に来て頂いたのは他でもありません」
「太子のことですね」
 張良はすぐに答えてきたのだった。
「それは」
「おわかりなのですね」
「はい、そうです」
 また答える張良だった。
「お話は聞いていましたので」
「流石ですね」
 呂后はここであらためて彼の凄さを知った。伊達に劉邦に天下を取らせたわけではない。彼は後世では稀代の軍師とさえ言われるようになるのだ。
「そこまで察されているとは」
「いえ、それは」
「では。どうされるべきだと思われますか」
 后の顔が真剣なものになった。
「太子を皇帝にする為には」
「その為には人が必要です」
 張良はまずこう言ってきた。
「人がです」
「人といいますと」
「天下に四人の賢者がいると言われているのは御存知でしょうか」
「四人の賢者」
 后は彼の言葉を聞いてまずは考える顔になった。それから暫くして言うのだった。

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