暁 〜小説投稿サイト〜
dark of exorcist 〜穢れた聖職者〜
第29話「自己犠牲」
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ドスッ!  ザスッ! ザスッ!






「ぐっ…!!」


「クリス君!!」




クリスはアイリスの前に両手を広げて立ちはだかり、アイリスの盾となった。
羽根はクリスの右腕と左脇腹を抉り、心臓には深々と羽根の軸が突き刺さっていた。


「アイさん…大丈夫ですか? どこもケガしてないですか?」

口から血を垂らしながら、アイリスの心配をする。

「私はいいよ!! それよりクリス君の方が……」



「大丈夫ですよ。僕は"フォールマン"ですから。この程度じゃ死にません」

笑顔でそう答えると、心臓に突き刺さった羽根に手をかける。
徐々に手に力が込もり、ズブズブと血と肉片が傷口から溢れ出てくる。
しかし、当の本人はそれを全く気にしていない。

次の瞬間、ズブッ!と大きな音と同時に、羽根がクリスの心臓から引き抜かれた。
傷口からは、失血死してもおかしくないほどの血が垂れていた。



「僕は見ての通りの化け物です……だからアイさん、心配しないでくださ……」

心配しないでください、というクリスの言葉は途中で遮られた。
言い終える前に、アイリスが自身のコートを脱いでクリスの傷口に当てたからだ。

「………」

「ア、アイさん? 僕に止血する必要は……」

「必要じゃなくても…使って……」

顔を俯かせたまま、アイリスはクリスに黒いコートを傷口に押し当てる。













「君は………もっと自分を大事にして。自分を化け物なんて言わないで」



俯いていたアイリスが顔を上げると、目に溢れんばかりに涙を溜めていた。


「アイさん………」



涙をぬぐいコートを手放すと、腰のホルスターから2丁拳銃を取り出し、大鷲の方に視線を移す。


「私が戦うから……クリス君は少し休んでて」

クリスに背を向け、フレースヴェルグと対峙する。



「大丈夫か? アイリス」

「うん……大丈夫」

「……クリスが心配なら、手早くこの仕事を済ませよう」

「…………うん」




「(クリス……自己犠牲は感心しないと言った直後にこれか……)」

シャルルはアイリスに気付かれないよう、クリスを強く睨む。
クリスもその視線に気付き、申し訳なさそうに顔を伏せた。



「…………行くぞ」


シャルルの静かな呟きに、アイリスは静かに頷く。
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