第二十夜「必然」
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「彼とは大学のサークルで知り合い、よくドライブがてら海まで遊びに行ったものです。スポーツ万能の彼は水泳も得意で…」
よくもまぁ延々と…。
ここは、とある結婚式の会場で…今日は元彼の結婚式。
なんの因果で呼ばれたのか知らないけど、私はその一席に座っていた。
こんな式にどうして来たのか、自分でも理解し難い。でも…何となく気持ちを整理したかったのかも知れない。
ここは三人掛けのテーブルで、私の他に同卒の二人が掛けている。
一人は楠良樹で、もう一人はその奥さんの由美子だ。この二人は大学卒業後、直ぐに結婚していた。
私の名は松下麻奈。そして、一番目立つ席へニヤケながら座っているのが元彼の伊藤優。それから、その横にいけしゃあしゃあと座っているのは…勤めている会社の同僚である綾だ。
要は…彼氏を寝取られたってわけ。
あれは…そう、三ヵ月前のこと…。
「麻奈、俺と別れてくれ。」
突然だった。何の前触れもなく、彼は私にそう言ってきたのだった。
「な…なんで!?」
私には訳が分からず、彼を真っ向から問い詰めた。
子供のように駄々を捏ねて、聞いちゃいけないことまで聞く羽目になったんだ…。
「俺、お前以外にも女がいるんだ。」
あまりにも正直過ぎて、何言ってるのか理解出来なかった。
そんな私に、彼は追討ちを掛けるかのごとく、言葉の冷水を浴びせかけたのだ。
「そいつさ、子供…出来ちゃってさ。」
正直、殺してやろうと思ったわ。その女も…。
「相手は…誰?」
でも、その女の名を聞いて…私は失望したんだ。この男のすべてに。
「宮野綾だ。」
よりにもよって、あんな女抱くなんて!
社内じゃ有名だった。誰とでも寝る女だって…。
そんな女だけど、外見も顔立ちも良く、妙に男好きする女だった。
優だって、それを知っていたはずだわ。
「ねぇ、私の体じゃ…ダメだったの?」
「そういうんじゃなくて…」
歯切れが悪い。こんな男だったっけ?結局、優は体目当ての男だったんだって、そう感じた。
私は深い溜め息を吐いた。
私の目の前で、あれやこれやと言い訳を並べてるだけの男。それを見て、自分にさえ失望した。
―こんな男を愛してたなんてね…。―
自分の見る目の無さを痛感させられたんだったわ。
それがどうして…。
「こんなとこ居るのかしら…?」
つい口から言葉が洩れてしまった。
「え?何か言った?」
由美子が私の方に振り返ったので、私は「何でもない。」と笑って誤魔化した。
でも、ほんと…私って何しに来たのかしら?
自分の愚かさを確認しに?それとも自分の心の醜さを?
なんでもいい…。
周囲が騒めいた。どうやらスピーチが終わったみたいね
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ