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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
15.表は白く、裏は黒く
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は正教圏の方で活発な技術だから、私もあまり詳しくない。込められた属性が分かれば少しは捗るけど、この剣につり合うオリハルコンの入手も難しい。素材と技術が揃ったうえでも、そもそも剣の質が桁外れに高いから打つのに時間がかかりそうだね………一から剣を打ち直した方が早いと思うわよ?」
「だよねー……本人もそう言ってたよ。でも、きっといずれリングアベルにはこれが必要になるから………」

 憂いは消えることがない。消えた彼の過去に纏わる手がかりを、ヘスティアは一つだけ知っている。

「その剣に込められた属性は……『闇』だと思う。それも、あれは魔法やアスタリスクによって後天的に得た物じゃなく、彼が元来持ち合わせていた性質だ」
「おい、ヘスティア……自分が言っている事の意味が分かっているのか?」
「リングアベルのステイタスをこの目で直接見たボクが意味を分からないとでも思うかい?」

 悲しそうに、ヘスティアはそう呟いた。
 人には種族や精神によって先天的な特殊属性や得意属性に目覚める事がある。眩しいまでの正義感は光、身を焦がすような衝動は火といった風に、その人に合った属性が目覚める。それらはごく少数の者しか目覚めないが、その中でも『闇』は最も珍しい属性の一つだ。

 『闇』の属性に目覚めるきっかけ。
 それは悪意。それは飢餓。枯渇。嘲り。嫉妬。憤怒。僻み。失意。欺瞞。絶望。罪悪。背徳。恐怖。復讐。喪失。束縛。愁傷――あらゆる負の感情と理不尽な運命を煮え滾るドブ水に突っ込んで燃やし尽くしたときに命と共にたった一つだけ残るもの。

 『憎悪』という名の黒い塊。

 それに目覚めるものは、決まって『この世の地獄』を見た者。
 愛する者を目の前で喪った悲嘆の嗚咽が。
 信じる者に受けた残酷なまでの裏切りが。
 手に掴むべき栄光を奪われた者の慟哭が。
 この世界に満ちた痛みと悲劇が、この世に生きる人間の心を漆黒の闇に染め上げる。

「………本当、なのかい?そのリングアベルって子、話に聞いた感じではむしろ正反対のお調子者みたいだったけど……」
「辛い過去があったからこそ、自分で封じ込めた……そう考えられないかな?辛くて辛くて、自分で自分の心を壊してしまいかねないほどに痛い思いを封じたんだとしたら?………だからこそ、いつかきっとあの子は自分の闇と向き合うことになる」

 本当は向き合わないままリングアベルとして生きていて欲しいけど――と、ヘスティアは消え入るような声で漏らした。

 結局、ヘファイストスは両方の依頼を受けた。
 ただ、ひとつだけ。

「とりあえず、そのリングアベルってのに出会ったら『友達(ヘスティア)を泣かせたらタダじゃおかない』って伝えておくか……」



 = =



 ヘスティア出かけたま
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