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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
15.表は白く、裏は黒く
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「昔の借り、返してもらってないけど」
「そ……それはそれという事で。今回は必ず返すから!!」

 二人の為にヘスティアが出来る事。それは鍛冶の神であり超一級の武器や防具を作成する友神、ヘファイストスに頼み込んで武器を作ってもらう事だった。代償としてかなりの労働が予想されるが、それで二人が怪我せずに済むのなら安い代償だ。

「それで……確か頼み事は二つあるって言ってたわね。早めに言ってちょうだい」
「うん。一つは当然ベル君の武器だよ。今は短剣でどうにか戦ってるけど、大人しく見えて心の底には燃えるものがあるからね……せめて前へ進むならそれ相応の武器を持たせてあげたいんだ」
「ふむ……じゃあ一つ目はその子に短剣を作ってあげるってことね」

 神匠と呼ばれたヘファイストスの鍛冶の腕前は、神力を封じている今でも健在である。
 ヘスティアの熱意は十分すぎるほどに伝わった。ならば、それを汲んで彼女もまた全力を注ぐのが礼儀だろう。

「……で、もう一つは?」
「………これ、本当はヘファイストスに頼むべきじゃないのかもしれないけど………『これ』の修理、出来るかな?」

 ヘスティアがその服装の一体どこに入れていたのか質問したくなる黒い柄の剣を取り出した。神なのだからその程度の隠し芸には驚かないが、突然取り出した剣には目を惹かれた。
 遠慮がちに取り出されたそれを見て、ヘファイストスは鍛冶屋の目で注視する。

「触っても構わないか?」
「どうぞ見てくれ。とはいっても、途中から折れてるんだけどね」

 納められた剣の柄は漆黒の装飾がなされ、金色の鍔とコントラストになっている。黒い鞘はどこにでもある安物だが、引き抜くと中ほどで折れた真紅の刃が姿を現す。

「こいつは……材質はオリハルコンか……ここまでの純度のオリハルコンはオラリオでもほとんど出回ってない。銘は削れていて読めないが、これを打った鍛冶屋は相当な名匠だね。刀身が赤いのは何かしらの属性魔法の触媒替わりか?折れてはいるが、手入れはよくされている……不壊属性一歩手前くらいの強度がありそうなのによく折れたね?」
「折れた理由は分からないんだ。ホラ、前に話したファミリアのリングアベルが持っていた物さ。多分、彼の持ち物だったんだと思う。これを………直せないかな?」

 他人が打った剣を別の鍛冶屋に修理させるというのは、余り褒められた行為ではない。職人が込めた誇りと想いが詰っているのが剣というもの。それを勝手に弄るというのは一職人として気持ちのいいものではない。それを何となく分かっているからこその躊躇いなのだろう。
 それでも、ヘファイストスならできると思ったからヘスティアは態々リングアベルに頼んでこれを預かってきた。

「………これは、時間がかかるわ。剣に使われた属性強化加工
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